”それ”は兄貴の上で浮いていた

カテゴリー「心霊・幽霊」

小3くらいの時のこと。
うちは三つ離れた兄と二つ下の妹の三人兄弟で、その頃は兄弟三人同じ部屋で寝ていた。
ベッドの配置は兄用のシングルベッド、妹と俺用の二段ベッドで【兄のベッド】【二段ベッド】という横並びの配置。
二段ベッドの振り分けは上が俺で下が妹。
つまり俺の位置からは寝てる兄が見下ろせるようになってた。

その日も兄弟三人で寝静まった後、俺は尿意で夜中に目が覚めた。
おそらく深夜2時くらい。
家族も完全に寝ていたし、怖いからベッドから出れずにどうしようか悩んでいた。
そしたらゆっくりとドアが開いた。
その時の状況を説明しずらいんだけど
─ドア─────
【兄ベッド】
壁窓
【二段ベッド】
────────
って感じの部屋。

俺の頭はドア側で兄貴の頭は逆のドアに足を向ける向き。
なぜか開いたドアのせいで薄暗い廊下の突き当たりまで見える。
それがなんとなく怖くて俺は二段ベッドの柵まで布団をかけて、柵ごしに外を見るという防御態勢(布団に潜りつつ柵の隙間から息ができる)に入っていた。
どれくらい時間が経ったかわからないけど、薄暗い廊下の奥からゆっくり誰かが入ってきた。

しかも二人。
最初はおかんと親父だと思った、俺らがちゃんと寝ているか様子を見に来たんだと。
でも少し様子が違った・・・。
なぜかその二人は寝ている兄貴の上に乗っかったんだ。

乗ったというより、兄貴の上で浮いていた。
二人とも下半身がなくて、一人が兄貴の胸の上に浮いてて兄貴の顔をじっと眺めてて、もう一人はそれを斜め後ろから見守ってる。
その二人は兄貴をしばらくジーっと観察した後、兄貴の胸に電柱の取っ手くらいの釘(?)を打ちこみはじめた。

意味がわからなかった・・・。
とにかく怖くて怖くて動けなかった。

息を殺して音を出さないように、”こっちに来ないよう”にと祈りながら柵越しにそいつらを凝視していた。

そいつらの風貌は兄貴の胸の上で釘を打ってるやつが白髪で、長い髪の男か女かもわからない年寄り。
もう一人がまんまベートーベンみたいな感じ。
後ろで見守ってるベートーベンの頭は俺から近い。
ほんの少し手を伸ばしたら触れそうなくらい近い。
白髪のロンゲは兄貴に釘を打ってる。

『兄貴がやばい。殺されちゃう!!!!』

そう思いながらも怖くて本当に動けない。
徐々に限界が来て息が荒くなってきた。
今にして思えば過呼吸状態だったんだと思う。
「ヒュッヒュッヒュッヒュッ」と呼吸音が出てしまっていた。

そして次の瞬間、ベートーベンが見上げるようにこちらを見た。

目が合った瞬間、ぶわっと俺の目線の位置まで浮かび上がってきて、俺とベートーベンは柵越しに数十㎝の距離で目が合っている。

見開いた目は青く光っていて、表情はめちゃくちゃ怒っていた。

『次は俺だ・・・!俺が釘を刺されるんだ・・・!』

柵越しに相変わらず目が合っている。
ビビリすぎてもっと息が荒くなる。

「ヒュッヒュッヒュッヒュ」

多分、そこで意識を失った。
気がついたら朝になっていて、兄貴は胸が痛いと言って学校を休んだ。
俺は余計なことを喋ったらあいつらがまた来る気がして何も言わなかった・・・。

今こうして書きながらも若干ガクブルしてる。
マジ怖かった。
なんだったんだアレ。

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