扉く叩く者の正体

先月の中ごろ、妻の実家へ子供を連れて遊びに行った時のことだった。
妻の実家へは、挨拶程度に2回しか顔を出したことしかなく、泊りがけで行くのは今回が初めてだった。
そこは県境にある小さな町でさらに町から少し離れた田園が続くのどかな場所でした。

妻はお義母さんと何やら楽しげに話をしながら夕飯を作っていて、子供は、お義父さんと遊んでいた。
私は少し居心地の悪さを覚え、散歩でもしてくることにした。
妻に散歩をしてくると伝え、外にでると夕焼けが私を橙色に染めあげた。

道は人通りが少なく、煙草を吸いながらブラブラと散歩をしていると、左側の林の中に道が一本あった。
その一本道が不思議と気になり、私はその道に入った。
しばらく行くとお堂のような建物が私の目の前に姿を現した。

鳥居が建っていて神社なのかと思った。
嫌な感じがし、背中に悪寒が走る。
しかしお堂と鳥居以外はなにもなく、帰ろうとお堂に背を向けたときそれは起こった。

バンバンバンバンバン。
私は驚いて振り向くとお堂の扉を誰かが叩いているようだった。
辺りは日も落ちかけて暗くなってきている。

まさか、地元の子供がお堂の中に閉じ込められてしまったのではないのか?
その時私はすぐにその場を去りたかったが、そんな想像もしてしまったので、扉を開けて確かめることにした。
実際怖いもの見たさもあった。

「おーい、誰かいるのか?いたら返事しろぉ」

なんの返答もない。
ゆっくりお堂に近づく。
引き戸になっているお堂の扉に手をかけた。
扉を開けたが誰もいない。

暗かったが奥にはお地蔵さんが祀ってあった。
お地蔵さんはちょっと不気味だったがこれで帰れると安堵した。
その瞬間肩に重みを感じ耳元で息遣いが聞こえ、その後に微かに声が聞こえた。

「まだ帰るなよ」

それからは全力疾走で走って逃げた。

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