この話は私と父しか知らない

カテゴリー「不思議体験」

大した話じゃないけど、私の初めての不思議体験を一つ。
あれはいったいなんだったのか。

私が幼稚園児だった時の話。
小さい子の運動会って親と一緒にやるような競技ってあるよね。
私のとこもそんな競技があった。
親と子供が2人1組になって、親が目隠ししてる間にいっぱいに並べられた段ボールのなかに子供が隠れる。

で、みんな隠れたらよーいドンで親が段ボールひっくりかえして、自分の子を探してゴールしてくようなやつ。
リレー方式じゃなくて、親が子供全員を見つけ終わるまで次の組はスタートしないルールだった。

私は父と前の親子組が結構苦戦しているのを見ていたから、入る段ボール決めとこうって話になった。

父:「どれがいい?」
私:「あの猫の絵がついてるのがいい!」
父:「じゃあ、誰かに取られないように1番にいくんだぞ」

そんな話をしながらいよいよ私たちの組の番になった。
私は誰かに取られちゃいけないと思ってその猫の段ボールをじっとみてた。

それで、先生が「はい、隠れてー」って言ったと同時にそれめがけて走っていった。
おかげで誰よりも早くその段ボールについた。

私はやった!と思ってさっそく隠れようとその段ボールを開けた。
すると、中に先客と目が合った。
中に私と同じくらいの子がいた・・・。

その子は開いた段ボールから何も言わないでじっと私を見ていた。
私が競技が始まる前からずっとその段ボール見てた間、誰も入って行かなかったのに・・・。

しかし、私はその頃から頭が足りていなかったらしく、すぐにおかしいと思えなかった。
ただ先生から言われてた、「先に入っていた友達がいたら喧嘩しないでほかのやつにしましょう」ってことを思い出した。
だから、私が先だったのに!と思いながらも他の段ボールに隠れることにして、その箱を閉めた。

最後までその子は何も言わなかった。
結局、打ち合わせと違う段ボールに入ったせいか、なかなか見つけてもらえずビリになった。

父:「なんであの猫のやつにしなかったんだ」
私:「だって、ほかの子がいたんだもん。私が一番に着いたのに」

父:「は?・・・誰も入ってなかったぞ」
私:「いたよー。先に見つかってゴールしたんだよ」

父:「・・・俺が一番に見に行ったが、いなかった!もうこの話はしないぞ。次からはお母さんにでてもらえ」

急に怒ったように言い出す父に小さい頃の私は訳がわからなかった。
ただ見た目はヤ○ザだが、いつもやさしい父の急変ぶりに母や姉にどうしたの?と聞かれても、話したらいけないのかと思って話さなかった。
だから、この話は私と父しか知らない。

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