何者かが泳いでいた

カテゴリー「不思議体験」

夏になると思い出す、14年ぐらい前の話です。

うちの町は小学校が4つあって、体育祭やら水泳大会やら鼓笛パレードやらを4校合同でやることが多かった。
その内の町内水泳大会での話。

私は最後の競技、4校対抗50m×4リレーのアンカーだった。
他の学校のアンカーの子に対抗心を燃やしてたり、今年も優勝すれば9年連続優勝だ、とかもろもろの理由によりガキんちょなりに燃えていた。

水泳大会で使用した25mプールは町の中心の小学校のプールで、全部で6コースあった。
その内、リレーで使ったのは1コースと6コースを除いた2、3、4、5コースだった。
うちの小学校は確か5コースだったと思う。
ひょっとしたら2コースだったかもしれない。
だが、スタート地点から見て自分の右側が空きコースだったのは確実だ。

リレーが始まり、レースは3番手までうちの小学校とS校がトップ争いをしていた。
そしてそのまま僅差でアンカーへと繋がれた。

水の中へ飛び込み、私は夢中で泳いだ。
S校のアンカーには負けたくなかったし、何より優勝が見えている。
だから必死で泳いだ。

25メートル地点でターンする。
残り25メートル。

そこで私は気がついた。
私の左前方(身体1つ先ぐらい)に泳ぐ人影が見えた事に。
いつの間にかS校のアンカーにあんなに引き離されてしまった。
私は咄嗟にそう思った。
あれだけ僅差の勝負をしていたのに、私でこんなに引き離されてしまったらシャレにならないし、メンバーにも申し訳がたたない、と私はさっきよりも必死で泳いだ。

しかし差はいっこうに縮まらない。
左前方に見えるバタ足の泡、っていうのかな。
それを見ながらアレを追い抜かなきゃ、と必死で追った。
ラスト5メートルのラインが見えたところで、もうダメだと思った。
どう考えても追い抜けない。
私は負けたんだ。
そう思い、壁にタッチしてゴールした私は水から顔を上げ、メンバーに謝った。

「みんな、ごめん・・・」

しかし。
私の目に写ったのはよくやったと破顔している担任と、抱き合い喜ぶメンバーたち。
訳が分からず、「何位だったの?」と聞くとすぐさま「優勝したんだよ!」と返された。
そんなはずはない。
だって、私の前を泳いでた人がいたんだから。
そう言おうと左のコースを指差して、私は固まった。

指の先のそこは空きコース。

そして思い出した。
S校は隣ではなく2コース向こうだった事を。
後にレースの詳細を先生が教えてくれた。

「25メートルまではS校と互角だった。だけど、ターンしてから急にスピードが上がって、どんどんS校と差が開いていったんだ」と。

母親にこの話をしたら、「きっとお兄ちゃん(私の兄は死産)かご先祖様が優勝させてくれたんだろう」と言われた。

でも私は違うと思ってる。
だって、レース途中でそのコースには泳いでる人はいないって気付いたら、絶対パニクってリレーどころじゃなかったと思うしね。

自分の頭が単純でよかったよ。

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