輸血のつもりで注射

カテゴリー「日常に潜む恐怖」

海にまつわるっていうか、ビミョーな話で恐縮ですが・・・強烈なのが一個だけあります。

俺は、今は東京で暮らしてる田舎モンなんですが、中学二年の頃の話で、家では裏戸一枚で続く畑(庭?)でヤギを飼ってたんですよ。
つがいで飼っていてその頃は仔ヤギが二頭いました。
一頭は産まれて四ヶ月ぐらいの赤ん坊でなついてて可愛いからってよく座敷に上げて遊んでたんです。

爺さんとか親には「不潔だからやめろ!」って怒鳴られましたが、それでも懲りずに座敷に上げてたんです。

で・・・ある日、裏戸に仔ヤギが左後ろ足を挟まれて怪我をしたんですよ。
血が出てる足をびっこ引きながら悲痛にメェメェと鳴き出したんです。

その時、親父と爺さんが農協から帰ってきていて全てがバレて殴り飛ばされました。
獣医に診てもらうと挟んだ部分の太い血管が潰れて出血したからじきに弱って死ぬって言われたんです。

俺はハクジロウ(仔ヤギの名前)が死んだらお前のせいだって爺さんに言われて、どうにかして助けようと思ったんです。

無い頭で必死に考えた結果、俺は最悪の事態を引き起こしたんです。

その日の晩、学校の理科で海水と血液は中身が非常に似ていると教わったことを思い出し、爺さんの持ってた剥製用の注射器に潮溜まりから汲みんだ海水の上澄みを満たし、夜中にこっそりヤギの小屋に行きハクジロウに助かってもらいたくて輸血のつもりで注射したんです。

そしたらゲェーッと長く絶叫して目が飛び出て耳鼻口から血やらゲロやら噴出して死んだんです・・・。
驚きと恐怖のあまり俺も吐き戻しました。

家族が即行で小屋に来てゲロまみれの俺はもう死ぬのかと思うぐらい殴られたうえ、母ちゃんは私は気違いを生んだ、って号泣する始末。

翌日から中学を卒業して仙台市内の寮がある高校に行くまでは家族や親戚からは一線を引かれた扱いを受けました。

あの夏の夜からもう十三年とちょい。
ゴメンネ、ハクジロウ。

我が家族一同様、ソロソロ、ユルシテクダサイ。

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