最初はレイプ物と決めていました

カテゴリー「日常に潜む恐怖」

俺が高3の時、俺の意中には同じクラスのT子ちゃんがいました。
T子ちゃんとは中学の時から一緒でしたが、あまり話したことはありません。
T子ちゃんは明るくて、クラスの人気者でしたが俺は当時ちょっとオタク系だったので、当然といえば当然ですが。

それが大学受験が近づくと、T子ちゃんが学年トップレベルの成績だった俺に質問などをしてくるようになりました。
勉強以外の会話は相変わらずなかったのですが、この状況の変化は俺にとって十分すぎる喜びでした。
5年近く片思いをしてた相手と少なからず接近したわけですから。

そして俺は18歳の誕生日を迎えました。
俺はこの日どうしても手に入れたい物がありました。
そう、初のいかがわしいビデオです。

俺は免許がなかったので、パスポートを握り締めて町のビデオ屋に向かいました。
購入したのは素人レイプものでした。
当時の俺はレイプという背徳行為に異常なまでの興奮を覚えてて、最初はレイプ物と決めていました。

俺は代金を払うと、ビデオ屋の入り口付近で店の外の様子を窺ってました。
そのビデオ屋は町の繁華街にあったので店の外は結構人通りが激しいのです。
知り合いにでも鉢合わせたら、それこそ俺のイメージは地に落ちると考えていたのです。
このアホな行為が後に恐怖を招くとは知る由もありませんでした。

次の瞬間俺は意を決して、店の自動ドアの前に立ちました。
自動ドアが開くまでの時間がとてつもなく長く感じたのは後にも先にもあの時だけです。
「開いた!」と小さく心の中で叫ぶと、俺は何を思ったのかダッシュで店の外にでました。
人通りが少ないタイミングを狙ったといっても、そこは繁華街の中。

人や自転車はある程度行き来してます。
俺が店の出口からカタパルトダッシュを決めた直後、俺は自転車に乗ってる人と激突してしまいました。
俺は尻もちをつき、自転車に乗ってる人はガードレールに激突して、地面にうずくまってました。

俺はその瞬間凍りつきました。

そう、俺が吹っ飛ばした相手はなんとT子ちゃんだったのです。
T子ちゃんはただ無言で地面に倒れこんでました。

俺の大好きなT子ちゃんが苦しんでる・・・と思いましたが、俺はすぐこの場を後にしないとビデオを買ったことがばれてしまうと意味不明なことを思いました。
次の瞬間、俺は苦しむT子ちゃんと、驚く野次馬を尻目にその日2回目の猛ダッシュを決めてました。
あろうことか、レイプビデオを現場に置き去りにして。

その夜T子ちゃんの母親から怒りの電話が来た。
俺と両親はT子ちゃんの家に謝罪に行き、T子ちゃんの治療費をうちが負担すると言う事で、何とか事が収まった。
T子ちゃんの家の玄関で、T子ちゃんの母親が「あ、そうだわ」と何か思い出したように口走った。

「これM哉君の物なので、お返しします」と紙袋を渡された。
そう、あのビデオだった。しかもビデオ屋のビニール袋ではなく、紙袋に入れられていた。
俺は5年越しの片思いは100%実らないことをこの時確信した。

次の日学校に行くと、クラスの反応は予想通り冷たかった。
俺はその日から卒業まで学年のほぼ全員に無視されつづけた。
俺にとって何が恐怖だったかと言うと、自分の名誉を守るためなら・・・好きな女の子が苦しんでても平気で逃げる事が出来たということ。

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