「ウラベさん」という怪談

カテゴリー「日常に潜む恐怖」

中学の頃、夜遊びが流行った。
田舎で治安も良く、親が心配するのはツキノワグマに遭遇する事くらいだった。
鎌やカッターナイフさえ持ち歩いていれば外出は自由だったからみんな夜遊びに出かけた。

先輩達とたまり場で話すのが嬉しくて行ってた。
先輩たちは色んな話を持ってるし、何もない田舎では話が娯楽だった。
怪談やセックスの話や尻にどじょうを入れて抜けなくなった話なんかをしてくれた。

その中に地元がネタのやつが一つあった。
ウラベさん(漢字がわからない)という名前の怪談で、戦前の薬売りの話。

内容は2つあって・・・。
1つはありきたりなんだけど薬売りの娘が大昔レイプに遭って山に棄てられた。
遺体が見つからず、近所の山で最近見つかった白骨遺体がウラベさんじゃないか?という話。

2つ目は山に棲み着いた山姥の話。
山姥が山で悪さばかりするので、焼き討ちに遭った山姥。
その山姥の怨霊が夜の山に出る。
「イヤァ」「ヤメテェ」などの断末魔が聴こえるという話。

この2つの話は同じ山の話なので、関連があるかもしれないと先輩は言うのだ。
2つ目の話は私が幼い頃に学童の物知りジジイが話してるのを聞いたことがあった。
知ってる話が出ると恐怖が増えた。

しかし先輩たちは車を出すから今度行こうなんて事を言いだした。
声が聴こえるまで車で車泊すると言い出して、その週の土曜日に行った。

実際に行ってみると1時間もしないうちにみんなが飽きて寝たりちんこの触り合いを車内で始めた。
といってもホモっぽいノリじゃなくて嫌がってる反応を愉しむための物。
外が明るくなってきて運転手の佐伯さんが残念そうに「なんも出やんかったな帰ろか」そう言って解散した。

家に帰ってきたものの、カギがかかっていてドアが開かない。
おまけに内側からしか開けられないネジ式のカギだからどうする事も出来ない。

うちは農家なんで朝も早い。
時刻は多分だけど朝6時くらいだった。
そんな時間ならもう家には誰もいないハズだからあいてる。
そもそも家にカギがかかっていた事なんて今まで無い。

何度かドアを叩いて呼んでみるけど誰も居る気配が無い。
しょうがないから家から少し離れた所の繁華街へ行くためにバス停に行った。
バスは1日2本。
朝7時と夕方5時。

バス停で車泊に参加した同級生の三重君に会った。
三重君の家も同じカギの方式なんで二人で不思議だよなぁ~なんて話してた。

いくら待ってもバスが来ない。
これはおかしい。

日曜祝日は9時からしかバスが出ていない事を二人は思い出した。
しょうがないからバス停で寝る事にして寝た。

起きたら夜だった。
三重君はもう居なくて外は暗い。
家に帰ってみたらカギは開いていて玄関に入るや否や母親が抱きついてきた。
「あんたどこいっとったん」バチン(ビンタ)「無事で良かった」

経緯を説明してもカギはかけて無かったとかで話が通じなかった。
佐伯さんが事故を起こして家族はそれで心配していた事を後で知った。
佐伯さんと一緒に乗っていた佐伯さんの友達は軽い怪我だった。
三重君はバス停のあったすぐ近くの田んぼに落ちて足を骨折していた。
立ちションしてたら落ちたそうだ。
俺は特に怪我はしていない。

ウラベさんに関係あるのかはわからないけど、俺以外がみんな怪我をしたのが怖かった。
あと、なんで俺と三重君の家だけが開かなかったのかも未だに謎で怖い。

佐伯さんが事故を起こす直前に断末魔が聞こえて来て事故をしたという話を事故から1年ほど経過してから聞いた。

寝不足だったろうし、実はめっちゃ怖かったからそんなもん聞こえたんだろう。

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