壁紙の向こう側

カテゴリー「日常に潜む恐怖」

とある不動産屋が東京に住む知人の不動産屋をからかおうと、「東京で一戸建てで1万円の物件探してくれよ」と電話をかけました。
それから1週間後にその不動産屋に1本の電話がかかってきました。

「おい、このあいだのなぁ、・・・あったんだよ。1万の物件。見に来いよ。」

不動産屋は冗談を冗談で返されたと思い、久しく会っていない知人に会いに行くつもりで、その話に乗ってみることにしました。
東京に着くやいなや知人は「さっそく見に行こう」と、不動産屋を例の物件へとつれて行きました。

「・・・まじで?」

これが不動産屋の率直な意見でした。
外見はどう悪く見ても築2~3年で新築といわれても疑うことができないくらいな奇麗な建物でした。
さっそく中も確かめよう、ということで2人は室内を確認することにしました。

中に入ってもあまりに奇麗な建物なので、不動産屋はやはりだまされているのか・・・なんて思ったそうです。
そのとき知人が「そういえば・・・」と何かを思い出している様子です。

「この間見にきたとき、クレヨンが落ちてたんだよなぁ。前に住んでた人の落とし物かねぇ」と独り言のようにつぶやく知人を尻目に、不動産屋は2階も見てみることにしました。

傷一つ無い、というのは過言ですが、この物件を気に入った不動産屋は見取り図を書いてみることにしました。
・・・書いていくうちに、不動産屋はあることに気付きました。

「2階に1部屋足りない!?」

外に出て見た感じと中から見た感じではやはりあるべきところに部屋が無いのです。
知人も気付きましたが、どう見ても無い物はない、とあまり気にも留めない様子です。

「ここ、ここだよ。部屋があるはずなんだ。扉が必ず・・・」

探し始めた不動産屋の目に止まったのは、よく見ないとわからないほどの壁紙の切れ目でした。

「ほらみろ、こんなのおかしいだろ?」と不動産屋が知人に問い掛けると「そんなにいうなら、おまえの気の済むまで探せよ」と知人はあきれている様子。
絶対部屋があると信じている不動産屋は、思い切って壁紙をはがしてみることにしました。
そこには・・・あまりにも乱雑に打ち付けた釘と奇麗にそろえられた板が現れたのです。
そしてそこには扉が・・・。

はやる気を押さえてその扉を開けてみると真っ白な部屋は赤いクレヨンで書かれていました。

「おとうさんだして」「おとうさんだして」「おとうさんだして」「おとうさんだして」「おとうさんだして」「おとうさんだして」「おとうさんだして」「おとうさんだして」「おとうさんだして」「おとうさんだして」

この物件は今でも売りに出されているそうです。

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