あのオヤジの形相

カテゴリー「日常に潜む恐怖」

俺が小学生たっだ頃の話。
季節は蒸し暑い日の昼過ぎ、夏休みということもあり、友達2人と俺、計3人でカブトムシを取りに行った時の出来事。

友達の内の1人が知っているカブトムシがよくとれるという秘密の場所へ行ってみようということになった。
そこは町外れのとある雑木林。
膝の高さ位の草が生えていて、かすかに獣道らしきものが残っているだけで道なんてない。
雑木林の中は、上空が葉や木々で日の光が遮られていて、あたりは薄暗かった。

かすかに残っている獣道の入口を見つけ、暫く歩いていくと、大きな広場らしき場所が見えてきた。
すると、なにやら人の気配・・・。
恐る恐る近づいて見てみるとなんと、作業着を着た子太りのオヤジが、1人でうずくまっているのが見えた。

そのオヤジ、何やら意味不明なことをブツブツと言っている。
怖いけどカブトムシは取りたい、引き返す訳にもいかず、その場を通り過ぎようとした。

俺達の存在に気付いたのか、そのオヤジいきなり立ちあがり、あたりを見まわしている。
そして俺達の存在を確認すると、半分笑みを浮かべたような表情で俺達を見返してきた。

すると、何かカマのようなものを持った手を振りかざしつつ、訳のわからないことを叫びながら、こちらに近寄ってくる。

怖くなった俺達は大急ぎで今来た道を全力で引き返した。
しかし、けたたましい声を張り上げつつ追いかけてくる。
俺達は道なき道を全力で走った。

向こうは大人だし小学生よりも足が速いのは当然、もう捕まってもいいや、もう半分諦めかけていた。

所々に散乱していた落ち葉や地面の起伏、そして微妙に木々が入り組んでいたことが幸いしたのか、どうにか振り切って、やっとの思いで遊歩道に出て、通りすがりの人に助けを求めた。

追いかけてくる時のあのオヤジの形相がいまでもトラウマ。
なんであんなところに1人でいたのか?
変態遊びの真っ最中だったのか?

もしひとりでカブトムシ取りに行っていたとしたら、って今思うとソーっとする出来事だった

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