一番奥のベット

カテゴリー「日常に潜む恐怖」

病院の3人部屋に3人のおばあちゃんが入院していた。
その病室はベッドが一列に並んでいて、一番奥に窓がある。
入院暦の長い者が奥から順にベッドを使用。

自由に動く事もままならない老人の長い病院生活で変化や楽しみは乏しく、外の景色を見ることは皆無に近かった。
そこで唯一の楽しみは窓から外の景色を眺める事。
だが動く事も困難な為、その窓から外を眺められるのは一番奥のベッドのおばあちゃんのみ。

しかもカーテンに頭を入れて他の二人には見えないように外をを眺めていた。

「わぁかわいい子犬が通ったよ」

「アイスクリーム屋が売りに来てる、おいしそうだ、食べたいなぁ。」

窓の外を眺められない二人に自慢気に独り言をいい続けた。

残りの2人のおばあちゃんは窓の外が見たくてたまらない気持ちが増していった。
なんとか二人はカーテンを開けてくれるよう、看護婦にも頼んだ。
が、窓際のおばあちゃんが看護婦の前では「太陽の光がまぶしすぎる!」といいはり、看護婦は一番入院暦の長いそのおばあちゃんの言う事を優先し、残りの二人が言うことは、全て無視した。

そんなある日、窓際のおばあちゃんは病状悪化で亡くなった。
次の日に、奥から2番目のベッドを使用していたおばあちゃんが窓側ベッドへ移動。
すると、2番目のベッドへ移動したおばあちゃんに「わぁほんとだ窓の外には色んな人や花や建物があふれてるなぁ。」と聞こえよがし。
もちろんカーテンを全開にはしてくれない。

2番目のベッドのおばあちゃんはもう見たくてたまらない。
だが、今窓際にいる人は時々心臓発作を起しはするが、年もそう変わらず中々死にそうにも無い。
ともすれば、寿命が来て一生外を眺めれないまま自分が先に死んでしまいそうだ。
そんなことは耐えられない。

そこで、考え付いたのがこの人は心臓発作を時々起こしている。
先日も発作を起こし、私がナースコールをしてあげ、彼女はいつも枕もとに置いている薬を自力で飲み助かった。
今度発作が起こったとき彼女の枕もとの薬を払いのける事に成功できれば。

そしてその日がきた。
窓際の彼女が発作で苦しみだしてるすきに、私は懸命に腕を伸ばし彼女の枕もとから薬を払いのけた。
そしてナースコールを押してあげた。
看護婦は落ちている薬を発作を起している彼女がもがいて飲もうとしたときに誤って落としたと解釈してくれた。
彼女は治療むなしく死亡。

翌日待ちに待った窓際のベッドに移動。
看護婦が手伝ってくれて背を起し、いよいよカーテンを開いてもらった。

そこには隣のビルの壁が一面に広がっていた。

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