内臓もそのまま下水に流して

カテゴリー「日常に潜む恐怖」

うちの祖母は大の肉嫌い。
魚は食えるけど肉は全く食わない。
理由は小さい頃に何度も飛び込み自殺を目撃したり、近所にハム工場があって今はどうだか知らないけど、昭和初期はハム工場で屠殺されていた為、夜中に叫び声が聞こえたり内臓もそのまま下水に流していたから
家の裏を腸が流れていくのを見たりと・・・そんなトラウマから食えないらしい。

そんな祖母が嫁入りしたころの話だが、一応都会から田舎に嫁入りしてきた祖母は当時子持ちバツイチだったため田舎の仲間になかなか入れなかったらしい。
今でこそバツイチ位、そんなに悪いようには言われないけど割と最近まで差別されてきたから、昭和初期のバツイチなんて軽く村八分だったらしい。
特に隣の家のお婆さんにはいびられたと言っていた。

そんな状態で戦争になり曽祖父は戦死して祖父も戦地に行き曾祖母と祖母の二人で暮らすことになった。
疎開先になるような場所でも無かったし、農村なので村に残った人間同志で野菜を分け合ったりでそんなにひもじい思いはしなかったがある日、近所の婆さんが肉が手に入ったからみんなで鍋をやろうって誘ってきたらしい。

普段、村八分状態だったがやっと仲間に入れて貰えるのかと嬉しくなって二人で出かけた。
家に行くと結構な人数が集まっていて軽くどんちゃん騒ぎ。
祖母も飲めない酒を飲んで酌をして回り一緒に騒いでみたらしい。
もちろん鍋の肉には手も付けなかったが・・・。

数日後、隣の家の嫁さんと井戸端会議をしていて「最近、茶を見ないね」って話になった。
茶と言うのは近所でも名の知れた茶トラの猫で悪さばかりすることで有名な猫だった。
例えば、干してあった干物を盗んだり、家に上がり込んで囲炉裏に糞をしたり等々・・・。
そんな事を話していると先述した婆さんがやって来て話に加わってきて一言、「こないだの肉が茶だよ」と。

余りにも悪さばかりするので、その婆さんが捕まえて殺し、肉は勿体ないからとみんなを呼んだらしい。
その話を聞いて祖母は直接肉は食べなかったが、より一層肉嫌いになったそうな。

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