台所の犯人

カテゴリー「怨念・呪い」

私の家は母がパートに出ていたので11時から夕方まで、平日の昼間は犬が一匹で留守番をしていた。

ある年、夏休みに入って、買ったばっかりの食パンやフランスパンが噛られるという、奇怪な事件が相次いだ。
電子レンジの上のカゴには他にバナナ等の果物も乗っているのに、被害に遭うのはなぜかパンだけであった。
母は私が部活帰りや深夜に、つまみ食いしてるのだと思っていたらしい。

「なんで1枚全部食べずに置いておく必要があんねんな。しかも、なんで袋ごと囓ってつまみ食いせなならんねん。」
私は真犯人をつきとめようと、電子レンジの上、カゴに入って乗ってるパンにテグスでドアベルをくくりつけた。

早朝、チリンと音が。駆けつけてみるとテグスは引きちぎられパンは床に落ちていた。
「お前なにか見たか?」いつも台所に寝ている犬に聞いてみても、嬉しそうに尻尾を振るばかり。

しばらくして昼夜関係なく、壁のなかや天井が、コトコト、ごそごそと何かが通る音がするようになった。

ねずみ?台所にはネズミが出入りできるような穴はどこにも無かった。
しかし、猫イラズを天井裏や台所に置いて退治してみることにした。
すると2日後、ドンドンと天井をけたたましくのたうち回る物音が1時間ほどつづき、グエーッ!という断末魔とともに静かになった。

その音から、あきらかにネズミよりも猫よりも大きい動物であったと思われる。
その後、パンはかじられることは無かった。

ある日、私は夜中にトイレに行った帰りに水を飲もうと台所に向かった。
電気の消えた台所から犬が私が来たのを知って起き出して歩いてきた。
しかし、こちらに来る途中で止まり、ある方向を見て嬉しそうに尻尾を振っている。

犬の視線をたどっていくと、電子レンジの前を見ていることが分かった。
そこには1mくらいの高さで人型に透ける薄い白いもやがかかっていた。

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