おじゃま道草(その2)

カテゴリー「怨念・呪い」

※このお話に「おじゃま道草(その1)」の続きです。

さて、3人でキッチンへ・・・・・・。
6畳の広さがあるダイニングキッチンでしたが、だれもそこで食事を取らないため、テーブルなどの家具もなく、広々としていました。

まずは写真撮影・・・・・・。

私:「ん?なんだぁあれは・・・・・・」

柱の上部に、貼っていた紙を剥がした痕がある・・・。
きちんと剥がさずびりびりになって、中央部が残った状態です。
黄ばんでいて古そう。
しかも、そこだけでなく、部屋の四方に同じものがある・・・・・・。
御札で何かを封じた・・・・・・。
しかし破れた・・・・・・。
最も剥がれていないものに近寄って見てみると、真ん中が妙に黒い・・・・・・。
絵?・・・・・・黒犬。
御嶽山か・・・・・・?

私:「足がちくちくする・・・・・・いるな」

私は茅野君へ向かって、「何か感じない?」と言いました。

茅野君:「何か足がひりひりするよ」

私:「そう・・・・・・俺と同じだね。どの辺がひどい?」

茅野君:「この流しの前のあたりかな」

私:「そうだろう・・・・・・」

またしても意見が一致。
それまで黙していた弟の大輔が口を開きました。

弟の大輔:「すごい・・・・・・殺気がある。目を閉じると、今にも誰かが斬りかかって来そうな気配があるよ。それに、昔痛めた腰が痛くなった。弱いところをつついて来るみたい。この感じ・・・・・・修学旅行で関ケ原へ行った時以来だな。普通は俺、こういうの平気なんだけど・・・・・・ここは別だよ。何がいるんだぃ?」

私は、これは猫のようなわけには行かないな・・・・・・無理だなと思い、馬場君に転居を勧めることにしました。

そして、私がもう2,3枚写真を撮ろうとすると、茅野君が「何か気持ちが悪くなりそうだから、向こうで御茶飲んでるね」と言って台所をでました。

弟の大輔:「俺もそうするよ」

大輔も同じことを言いだしたので、私も出ることにしました。

練習室へ戻ると、馬場君が横になって寝ていました。

船井さん:「明け方までかかってバンドスコアを書いたって言ってたからね。でも、何か安眠してるようではないみたいね」

船井さんがタオルケットを馬場君にかけながらつぶやきました。

しばらくすると、うつ伏せの馬場君がうなされ始めました。
なにやら寝言で、「うん、うん」といっています。

私:「あれ?」

よーーく馬場君の方を見ると・・・・・・何か気配があります。
彼の上に、影の様なモノがのっているようです。

私は茅野君に、「どう思う?」と意見を求めました。

茅野君:「これ、金縛りじゃぁないの?押さえ付けられてんのかな?」

茅野君の直感は当てになります。
私は確信しました。

私:「馬場君は、意思が強く、行動力もあり、覚醒時は強い・・したがって、疲れてうとうとしている様な弱い時につけこんで憑依してくるんだ」

船井さんが「起こそうか・・・・・・」と、馬場君の肩をゆすりました。
でも起きません。相変わらずです。

私:「あっ、ちょっと待って、もし意識が飛んでいたらマズイ。帰還に失敗するかも・・・・・・無理に起こさないで」

私は、強く揺すろうとした船井さんを制しました。
その時、茅野君が・・・・・・「あれぇ・・・・・・何か動いたよ。馬場君の背中の上・・・・・・」と言い出しました。
そして馬場君の背中の上、30cmほどのところに、手をもって行こうとして・・・「おーーーっ」と、彼は、慌てて手を引っ込めました。

茅野君:「ああ、ぞっとした・・・・・・ちょっと、やってみなよ」

私にも促します。
なんと、茅野君にも見えたのです。

私:「やばいな。俺たちも影響をうけてるな・・・・・・」

私はそう思いながらも、彼に倣いました。

そおーっと手を出す。
動いている影の輪郭を抜け、突っ込む・・・・・・。
ひんやりとしています。
冷蔵庫に手を入れたときのようです。
それでもヤツは動こうとしません。
そおーっと手をひっこめる。
冷たさは消えます。
ヤツは動きません。

「ねっ、冷たいだろ?」と、茅野君が同意を求めてきました。

茅野君:「隙間風なんか通ってないよね・・・・・・やっぱり居るんだね」

彼はいつになく真顔です。
私は乗っているヤツがいまだ退こうとしないので、除霊九字を切りました。
そしてそれが効いたのか、ヤツの気配は消えました。
いや、一時的に退いただけですが・・・。

切った後、馬場君を揺すると、彼はすぐに目を覚ましました。

起きるなり彼は、「ああーーっ、疲れた。おれ、うなされてなかった?揺すったでしょ。分ったんだけど、夢がさめないんだ。これで4回目かな。同じ夢見たのは・・・・・・2階じゃ見たことなくって、いつもここで寝た時にだけ見るんだ。おれ、何か寝言を言ってた?」と、目をこすりながら一気に話しました。

船井さん:「うん、うん・・・・・・っていってたよ」

船井さんが答えると、「そうか?おれ、うんう・・・・・・って・・・・・・自分では首を振ってたつもりなんだけどなぁ・・・・・・聞いてもらえる?」

そう言って、馬場君は夢について語り始めました。

馬場君が見た夢の要旨は次のとおりでした。

馬場君:「気がつくと座敷に座っている。広い座敷で30畳ほどはある。電燈もなく、造りも古い。時代劇のセットのようである。しばらくすると少女が現れる。5,6才で可愛らしい。赤っぽい振り袖を着ている。七五三参りに行く姿のよう。髪もキチンと結ってある。時代劇でなら、武家の娘という役がら。少女が、『おにいちゃん、あそんで』とせがむ。」

馬場君:「遊んであげたいが、自分はここを動いてはならない。動くと帰れなくなるかも知れない・・・・・・という不安感がある。そこで、少女に『外で遊んできなさい』と勧める。しかし聞き分けない。『あそんで。あそんで』と繰り返しせがむ。」

馬場君:「しかたがないので、少しだけこの場所で・・・・・・と思うと、それを察したのか少女はニコッとして、持っていたお手玉を差し出す。さて、どうしようかな。そう考えながら、受け取ろうとする」

馬場君:「と、その時、座敷の奥の方から、『遊んでいてはイケマセン』という母親らしき声が響く。その途端、少女の笑顔は消える。蒼白となり、自分(馬場君)の陰に隠れようとする。
『呼んでるよ。行かないと叱られるよ』と言うと、少女はおびえ始め、今にも泣き出しそうである。」

馬場君:「そしてついに、母親が座敷のはずれから姿を現す。和服を着込み、すらっとしている。初めは遠くではっきりしないが、近付くにつれ、綺麗な顔だちであることがわかる。優しそうな母親じゃないか。そう思って後を振り向くと、少女は消えている。あれ?不思議に思いながら、母親の方を向く・・・・・・。先ほどの顔だちはかき消え、なんと般若になっている。恐怖に捕らわれ、にげなきゃ・・・・・・そう思った時、夢からさめる」

馬場君が話を終えた時、バンドのメンバーが2階から降りてきました。
ライブの打ち合せに皆で出かけるそうです。
腰をあげて私たちも帰る支度をはじめると、天井から・・・・・・いや、2階から、タッタッタ・・・・・・と誰かが走り回る様な足音がしました。

全員聞こえたようで、一瞬、皆動きを止め、顔を見合せました。

馬場君:「聞こえた?これで2度目だな?今、2階には誰もいないよなぁ」

馬場君が言うと、メンバー全員がうなずきました。

茅野君がすかさず、「大人だとドスッドスッという足音になるから、あれは子供だな。実際、2階で子供が走り回ると、あんな足音になるよ」と。

しばらく皆沈黙し、次の音を待ちましたが、もう足音は聞こえませんでした。

皆が出かけ、私たちも帰路につきました。

自宅へ戻ると、写真などをもとに背後関係を見てみました。

1階を歩き回っている「本体」は、千数百年前の怨霊です。
本来はこの土地のものではなく、因縁を背負った不幸な一族に執り憑いた状態でやってきた悪霊のようです。
一族を惨死に追込みながら、強烈な結界を形成し、自らを土地に呪縛してしまった形となりました。
負の結界はその吸引力により、捕まえられるものは何でも取り込んでしまいます。

写真の中には、犠牲となった浮遊霊などが多数みられました。
そしてその中に、決定的な取り込みがあります。

ある時、気がおかしくなった住人がいて、とんでもない大変なことをしでかしてしまいました。
屋敷を増改築する際に道祖神が邪魔になり、なんと石仏を井戸に投げ込んでしまったようです。

現代ならまだしも、普通の昔の人がそんなことをするはずはありませんから、余程狂った状態だったのでしょう。
オマケにその井戸は、その後そのままの状態で埋められてしまいました。
榎本君が神仏の罰かも知れないと言っていましたが、正にその可能性は大です。

「本体」を核とする結界内で、井戸の石仏が新たな強い核と化し、いわば二重ブラックホールを形成していることになります。

例の少女は、これらの吸引にひっかかってしまった、もっと新しい一族のひとりです。
今から百数十年前のものだと思われます。
母親が怨霊にやられたため、苦しい目にあったようです。
病気になり他の場所で亡くなりましたが、念だけはここに残りました。
例の猫は、その娘が可愛がっていた猫です。

いずれにしても、浄化できるような代物ではありません。
1日も早く転居すべきです。
私は電話で馬場君にその旨を伝えました。

しかし彼等は、転居の際に持ち金を使い果たしたらしく、すぐには越せないとのこと。
彼等も重なる不穏な現象に嫌気がさしていたが、お祓いなどで収まるのならば・・・・・・と思って、私に相談をもちかけたもようです。

私が「だめだ・・・・・・」と告げると、「そうか、やっぱりね・・・・・・」と納得し、出来るだけ頑張ってバイトをして金を貯め、急いで転居することを約束してくれました。

その後2ヵ月ほどで彼等は転居に至りますが、その間に随分と失うものがありました。
霊障が原因の人間関係のもつれです。

さて、私たちの方ですが、やはり霊障を免れることは出来ませんでした。

翌日の晩、榎本君から連絡がありました。
次の様な内容です。

あの後バイト先へ行くと、師匠が彼の顔を見るなり「どこ行ってきたの!」ときつい口調で言った。

そして、彼を本堂へ連れて行くと、「祓うからそこへ座って。自分の背後は見えにくいものだからなぁ」といって除霊をしてくれた。

浮遊霊がついてくることはよくあるが、普通は寺に居るうちに自然に落ちてしまう。
わざわざ祓ってくれるのはめずらしいことである。
その後、「かなり危ないことに関わってるね。やめなさい・・・・・・」と言うので、預っていた写真をみせ、知っていることを話した。

師匠の鑑定の結果は・・・・・・「お地蔵さまが抜魂をしないまま捨てられ埋っている。その下には水脈があり、お地蔵さまは泥にまみれている。その結果、この土地には仏罰がくだっており、その後、性質が逆転して怨霊の住み家と化した。また、惨殺された者がおり、その殺傷因縁が凄じい。意識を飛ばしただけで、その怨霊が斬りかかってくる。ある部屋にお札が貼ってあるが、まったく効果なし。命懸けで対峙すれば怨霊はなんとかなるかもしれないが、仏罰の方は手の施しようがない。」

師匠:「ここに関わるのは命を捨てる様なものである。自分なら頼まれても絶対に拒否する。出てきたもの憑いてきたものを、祓ったり追い返したりすること、即ち除霊は可能だが、浄霊は難しい。ましてや土地の浄化などとんでもないことである。そっとしておくしかない。障らぬ神に祟りなし。一日も早く手を引かないと命にかかわる。日本で有数の祈祷師であっても、現状では無理だろう。そこ一帯を穿くり返して整地する覚悟があれば、可能性が見えなくもないが・・・・・・。」

師匠:「それにしても、わざわざ命をかけて浄化するメリットが見当たらない。それに、この土地がそのようになってしまったそもそもの原因は、日本史以前にまで遡る。もちろんそれを調べる必要性はない。この様なスポットは所々に存在するので気をつけよ。しかしながら、この様な土地に引き摺り込まれたのには、やはり何等かの因縁がある。部外者にとっては考えようによってはいい経験だが、当事者つまり住人にとっては死への誘いである。因縁を自覚しないと、またどこかで引き寄せられるであろう。引っ越しの際にはすべての家具に荒塩をふり、出来るだけ早期に除霊の祈祷を受けなさい」というものである。

死人がでない内に、手を切ったほうがよい。

※おじゃま道草(その3)へ続く・・・。

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