※この体験談は体験談投稿フォームよりいただきました鈍色蝶様からの投稿です。
麻衣は古着屋のアルバイト店員。
今日も、新しい入荷商品を目ざとくチェック。
ふと、古びた革製のコートが目に留まった。
「このコート、ダメージ感最高!安いし!!」
麻衣はそのコートを一目で気に入り、自分で買う事にした。
裏地に赤茶けた染みがあるが、着れば見えないし、まぁいいだろう。
バイトが終わり、早速コートを着て帰った麻衣。
しかし、帰り道の途中、麻衣が横断歩道へフラフラと足を進めていると、「危ないですよ!?」そう声をかけられた瞬間、目の前を車が猛スピードで通り過ぎた。
前を見れば、赤信号。
隣にいた男性が引き止めなければ、轢かれていた。
それからというもの、麻衣は横断歩道前でボーっとしてしまう事が増えた。
それも、コートを着ている日に限って、危ない目に遭うのだ。
怖くなった麻衣は、コートを自分のクローゼットにしまいこんだ。
すると、危ない目に遭う事がピタッとなくなったのだ。
しばらく経ったある日、バイトをしていた麻衣のスマホに、「姉が交通事故に遭った。」と母親から連絡が入った。
病院に急行した麻衣が見たのは、重傷を負ってベッドに横たわる姉・美咲の姿だった。
「バッグや洋服、お返ししますね。」
麻衣が母親といっしょに病室にいると、看護師から美咲の所持品が手渡された。
しかし、それを見た麻衣は驚き、声を上げた。
「あのコートがなんでここにあるの!?」
美咲の所持品の中には、麻衣のコートがあったのだ。
実は美咲は、麻衣のクローゼットからこっそりコートを借りて、着てしまっていたのだ。
間もなく、霊感の強い叔母も、美咲のお見舞いに駆け付けた。
が、コートを見るなり、
「すぐ捨てなさい!」と強い口調で命令した。
麻衣が理由を尋ねると、
「以前の持ち主、交通事故で亡くなっているわよ。」と答えたあと、こう断言した。
「その赤茶けた染み、その子の “血” よ。」
叔母には、美咲の血を吸ったコートが、生き生きしているように見えたという・・・・・・