俺の親父が昔、大雨のなか山に入ったときに、遠くで「ドーンドーン」っていう木が連続して倒れる音がしたらしい。
親父は誰かが勝手に家の山の木を切っていると思ったらしく、そっちへ向かって歩いたが何も無い。
家の山の隣は標高の高い山になっており、国有林の大きな針葉樹がびっしりと生えている山になっていて、昼間でも日光が地面まで届かずに鬱蒼としたコケがびっしりと生えており、登山道でもないので誰も足を踏み入れない。
親父はそこまで行って誰も居ないことを確認すると、その鬱蒼とした国有林を見て怖くなったので踵を返した。
すると、後ろでまたドーンドーンと大きな音がする。
親父が持っているカメラで動画を取ろうとしたのだが、使い方が分からずに数枚の写真を撮っただけだった。
すると、遠くで鹿の無くような声が聞こえ、その大きなドーンという音が以前より近い場所で聞こえてきた。
それから親父は早歩きでクルマの置いてある場所まで移動して、後ろを振り返ると、木と木の間を黒い子供のような影が移動した。
こんな山奥に子供がいるはずもなく、親父は咄嗟に「早く逃げなければやばい!!」って思って、急いで車を発車させたんだけど、目の前の林道が倒木で通れなくなっていたので、バックでぶっとばして逃げてきたらしい。
なんでも、その近くに大昔に神様を祭った祠があるらしいんだけど、今は全く人が近づいていない上に国有林になったので、誰も管理している人がいないんだって。
まあ、その事件から怖くて余計に誰も行こうとしなくなったらしいけどね。