※この体験談は体験談投稿フォームよりいただきました鈍色蝶様からの投稿です。
とある小学校の職員室で、教諭が児童たちから提出された母親の似顔絵を一枚一枚チェックしているうち、ふと一人の児童の作品が目に止まった。
そこに描かれている母親は、美しく着飾ったスカート姿にもかかわらず、すね毛はボーボーだった。
まるで男性のように。
教諭は「せっかく身綺麗にしてるのに、ムダ毛の処理をさぼっているようだな。」と苦笑しながら、添付されている作文を読んだ。
そこには、
「ある夜、お父さんとお母さんがケンカしていました。
次の朝、ぼくが起きるとお母さんひとりだけで、お父さんはいなくなっていました。
お母さんは、『お父さんは昨日の夜お家を出ていってしまったの。これからはお母さんと二人で暮らしましょうね。』
と言いました。いなくなったお父さんは、大学時代にお芝居をやっていて女の人を演じるのがすごく上手だったそうです。
ぼ く の お か あ さ ん は せ か い い ち で す 」
と書かれていた。
その時、職員室に設置されているテレビから、
「市内で女性の変死体が発見され、警察は殺人事件として捜査に乗り出した。」というニュースが流れてきた。
それを聞いた教諭は「やれやれ、物騒な世の中だなぁ。」と独り言を呟いた。
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【解説】
これは、似顔絵を描いた児童からのSOSメッセージである。
実際にいなくなったのは母親(妻)の方であり、口論の末 父親(夫)に殺されている。
そこで、父親は女装して母親に扮し、失踪したのは父親の方ということにして、児童(息子)を欺き、殺人を揉み消そうとしている。
児童は真相に気付いたものの、母親(に扮した父親)に監視されているため、家の中で起こった事件を外部に伝えられずにいる。
そこで、児童は女性である母親の似顔絵を、わざと男性のようにすね毛をボーボーに誇張して描くことで、母親と父親が入れ替わっていることを、必死に外部へ伝えようとしているのだ。
ニュースで言われている女性の変死体とは、殺された母親を指している。
女装して お か あ さ ん になりきっている父親の演技力は文字通り せ か い い ち と言えよう・・・・・・