彼女はまだ塀の中にいる

カテゴリー「日常に潜む恐怖」

もうだいぶ前の事なんだけど、職場の同僚に殺されかけた。
相手は同期の女性だけど、付き合いの全くなかった人だった。

趣味も性格も合わなくて、ケンカはしないけど親しく口を聞くこともない。

その人に仕事の帰りに待ち伏せされて、金ヅチで殴り殺されそうになった。
たまたまその日近所で事故があり、警察が来ていたので彼女は現行犯逮捕された。

向うに好かれてないのは知っていたけど、殺したいほど憎まれるなんて夢にも思っておらず、最初はなぜ彼女がそんな事をしたのか分からなかった。

以下彼女の自供だけど、彼女も同人をやっていた。
ただし隠れてやっていたんだけど、事件の少し前、イベントで彼女のスペースに私が買い物に来て、鉢合わせしてしまった。

でもその場では私は何も言わず、社内でもその話をしなかったので、最初は人違いと思ったらしい。
ところがそれ以来会社で目が合うと、私がニヤニヤしたり思わせぶりな態度をとって来る。

いい加減気持ち悪くなって来た所、私が社内で彼女の婚約者としゃべっているところに出くわした。

その時私が、にやっと笑って彼女に目配せしたので、婚約者に同人をばらされると思った。
そこで追い詰められてやむをえず・・・と言う事だった。

確かに私も同人やっていたけれど、彼女の行ったイベントには仕事で不参加だった。
ジャンルも全く別で、彼女の本を買ったこともない。
それに彼女の婚約者は私の上司で、毎日仕事で顔を合わせている。
ニヤニヤどころか、私は彼女が同人やってる事すら知らなかった。
つまり全部彼女の妄想に過ぎなかった。

彼女はまだ塀の中にいる。
もちろん婚約は破棄された。

取り押さえようとする警官と、逃げる私を追いかけてる最中に、通行人にもケガさせているから、彼女はまだ出てこられない。

私も転職と引越しをしたので、まず安心だと思う。
でも未だに、なんで彼女が勘違いしたのが分からないし怖い。

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