ウェルニッケ脳症

カテゴリー「日常に潜む恐怖」

医療過誤の話。

ある男性が胃がんを発症し、胃を全部摘出した。
その後食事もなかなかとれないため、しばらくの間すべての栄養を点滴で摂取していた。

ところが、この点滴には必要なはずのビタミン(※ビタミンB1)が入っておらず、ウェルニッケ脳症という病気を発症する。
男性の場合、この脳症による症状は『新しい記憶ができない』というもので、過去の記憶はある程度あるものの(記憶障害もあるため完璧ではない)、新しい記憶の積み上げが不可能となってしまう。

例えば、買い物のメモをしても、十数分後にはメモの存在も忘れてしまう。
買い物にいく道はわかっても、買い物に行く道中で買う必要のあるものを忘れてしまう。
買い物を無事完了し、家についても、十数分後には買い物にいったことそのものを忘れてしまう。
いわゆる認知症に近い症状を若いのに起こしてしまう。

この病気を妊娠中に発症をした女性は、発症後に長男を出産したが、長男を出産した記憶すら無いため、毎朝「何故か自分の横に赤ちゃんがいる」という状態で、子供に対する愛情がもてないという例もある。

何故ビタミンが入ってなかったのかというと・・・お役所が医療赤字を抑えるため、ビタミンの投与を原則的に保険適用から外してしまったため、医師が点滴にいれずに投与してしまった、というもの。
必要なものなのに保健適用外にするお役所もおかしいが、だからといって点滴に入れろと指示しない医師もおかしい。

そのため男性は毎朝、朝起きたら子供が成長していることに驚く。
また自分が老けていることに驚き、自分が仕事をしていないことにも驚き、そして、自分が記憶障害であると妻に説明を受ける。
でも、その悲しみすら十数分で忘れてしまう・・・そんな毎日を過ごしている。
当然裁判も起こしているが、裁判を起こしていることすら覚えていない。

テレビ局が取材でスタッフが「何故私たちがここにいるかわかりますか?」と聞くと、「ええっと・・・なんでですか?事件でもありましたか?」と聞くような状況。
『自分が被害者である』ということすら記憶できない状態。

余談だけれど、この男性は記憶障害の3級と認定されてしまい、これも係争になった。
3級というのは『仕事はできないけど日常生活は可能』というもので、確かに日常生活をこなすだけの技術はあるが、十数分程度でやったことすら忘れるのに日常生活が可能といえるのか?

すべてにおいて妻がフォローしている現状を役所は認めず、「でも食事できますよね?お風呂も入れますよね?じゃあ3級でしょ」という判断をした。(係争の結果、後に2級が認められる)

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