昨日、山菜を採りに長野県北信の某所に行ったとき、どうしても説明ができない体験をした。
誰にも信じてもらえそうにないけど、真剣に怖かったので書き込ませて。
山菜を採りに山に入ったのは、午前4時頃。
わだちの跡を隠すように雑草の新芽が伸び始めた砂利道を車で進むこと十数分。
車を降りて朝方の山を流れるひんやりとした風の中、雨か朝露に濡れた草木をかき分けるようにして目的のポイントへ。
さらに、ここから歩いて十数分の場所に目指す場所はある。
目的はコゴミ、あわよくばコシアブラ。
道なき道をガサリガサリと進んでいくと、目印にしている大岩が見えてきた。
頭上には鉛色の空、それが僅かに明かるみ帯び始めていたから、おそらく4時半ぐらいだったのだと思う。
今まで小鳥の声と風の音ばかりだった空間に、唐突にその音が混ざり込んできた。
夏の頃に遠くから聞こえる太鼓と笛の音と良く似た音、と言うよりも、それそのもの。
まさか、祭り囃子?
ここは山の中、加えて前述のとおり比較的奥まった場所に位置している。
場違いなお囃子は、まるで日の出に追われるようにして、山の奥の方へと遠ざかっていくようだった。
薄ぼんやりと浮かんだ木々の間に目を凝らして正体を探ってみようと試みたが、結局、何も見つけることは出来ずじまい。
やがて空と森が朝の色彩を取り戻す頃には、お囃子は跡形もなく、すっかりと消えていた。
かく言う自分は不思議さと恐怖で微動だにも出来ず、もちろん山菜採りなど放り出して、慌てて下山した。
何度も何度も背後を振り返りながら、あの時ほど山が恐ろしい所だと感じたことはなかったよ。
それにしても、あの祭り囃子は何だったんだろう?