あのオンナ五人も産みやがってナァ・・・

カテゴリー「日常に潜む恐怖」

電車の中のほんのり怖い体験。
仕事で昼の二時頃、某路線の急行に乗った時のこと。

自分が乗ってすぐの駅でガリガリの女の人が乗ってきた。
白いワンピースは汚くて黄ばんでシワシワ、かついでるエコバッグぼろぼろ・・・。
ところどころ乾いた血みたいな茶色いシミがついてる。
髪が腰くらいまであって、これも洗ってない感じのぼさぼさ。
顔は生気のない澤◯希。

で、扉の窓から外に向かってなんだかぶつぶつ言っている。

「子供、潰す、腐れ」とか聞こえて来る。

声が波打って大きくなったり小さくなったりしている。
時間的に車内は空いてて座ってる人だけ。

やばいのが乗ってきた感満載で誰も一言も喋らないし咳払い一つしない。
女は次の駅についてもまだ降りず、相変わらずぶつぶつ。
入ってきた人たちも気持ち悪がって隣の車両に逃げていく。

自分もしれっと逃げたかったが荷物が大きかったのと、女と対面の近い位置にいたので、じっと腕組みして顔下向けて寝たふりすることに決めた。

電車が次の駅へ走り出すと、声のボリュームがうるさい小学生レベルまでいきなり上がった。
好奇心で何言ってるか気になったので聞き取り開始。
でも、何を言っているのかさっぱり。

「あのオンナ五人も産みやがってナァ、オニノハラ(鬼の腹?)ぼっこさせて人んちにずかずか来やって、なにさまのつもりじゃあいつら潰しても潰しても出てきよる。フコ?(フーコ?)したんじゃ、あいつナァ腹いっぱい喰いやがってぇ、餌やっても指落としても生えてきよるやろが、なんでそんな産むんじゃボケ腐れ、死ねや五人も」

ところどころうろ覚えだけど発言ママ。
この人よく改札通れたな、と思った。

しばらく繰り返したんだが、延々ループの中に「殺す」の単語が混ざりだして車内に緊張が走る。
自分の隣に座ってるお婆ちゃんがプルプル震えてる。
女はもう扉の窓に向かって叫んでいるレベル。

何もない空間に向かって、「お前のせいじゃ、殺すー殺すー」とか言ってる。

こうなると逆に見ない方が怖いから薄目開けて見てた。
襲って来たら蹴り入れる準備だけして。

大声で殺す連呼すると疲れたのか、女が息切れしながらふらふらしだした。
首をゆらゆら揺らせながらゆっーくり身体をこちらに向けた。
涎たれてるやばいこの人。

目は宙を彷徨ってあらぬ方向を見てる。

うわーと思ってると、いきなりカメラのピント合わすみたいに、ふっとこちらに目線を合わせてきた。
目をギョロっと開いてる。
フェイントに正直びくっと震えた。
「こっち見んな」、と思ってたら突然、何かにびびったような顔して「ギャァァァァァァァァァ!」って、耳潰れるくらいの大声で叫んで隣の車両めがけて全力ダッシュ。

扉にプチ当たって1回こけて、立ち上がって寄り掛かるように扉開けてアウアウ言いながら出て行った。

みんな唖然・・・。

再び隣のお婆ちゃん見たらまだ震えてたけど、ツボったのか顔が笑ってた。
それから一分も経たず駅について目的地だった自分は降りました。

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