俺は何かと「手」と関わりがある。
中学生の時である。
生まれて初めて撮ったプリクラが、生まれて初めての心霊写真となった。
俺の右肩に誰のものでもない手が乗っかっていたのだ。
一緒に撮ったのは二人の男友達だったが、聞いても俺じゃないの一点張り。
そもそも、手の位置がおかしく明らかに友人のものではないのが明らかだった。
ちなみにオカ板の心霊写真を扱う何かのスレで過去にUPしたことがある。
住人の反応としてはマジモノだ・・・という感じだった。
で、そのプリクラに関してはそこで終わりで、これといった話を残すようなことは無かった。
高校時代に話は変わる。
俺が2年生のときに「うちの高校の靴下を紺色のハイソックスにしよう」という会が一年女子を中心に作られていた。
当時生徒会を勤めていた俺のところに、その会の代表的存在の子が生徒会室にやってきて紺ハイソについて熱意を振りまいた事がきっかけで俺と彼女は知り合いになった。
彼女は大人しそうな清純な容姿でいて、趣味がビジュアル系バンドという多少ぶっ飛んだ性格であった。
はにかみながら「リストカットとかしたことあるんですよ」なんて言う子で、とにかく変な子であった。
でも芯はしっかりしていて、間違っても電波系ではなかった。
はっきり意見を言えない生徒会の女の子を叱りつけたことがあるほど、根はしっかりとしていた。
そんな彼女の祖母が“イタコ”だと聞いたのは、知り合って三ヶ月ほど経った頃である。
一緒に下校していた時にさらっと口にしたのだった。
そういう嘘をつく子ではなかったので彼女の言葉は信じられたのだが、しかし逆に、失礼ながらその口寄せの祖母が胡散臭く感じられた。
本当は口寄せなんてできないんだろう?という感じで。
そんな表情をしていたのだろうか。
彼女は変なことを言い出した。
後輩:「先輩。私もちょっとだけですけど、見えるんですよ」
俺:「何が?」
後輩:「何かが」
何かって何だよと聞くと、口寄せみたいに霊を呼ぶことは出来ないが、その人にまつわる何かが見えるのだという。
ちょっと胡散臭さを感じて、同時に、冗談で済むという気持ちが湧いてきた。
「じゃあお願いするよ」、というと、今はできないと言われる。
後輩:「いつかの放課後、二人きりで、どこかの教室で」
しばらくして、ある日の昼休み。
生徒会室で過ごすのが日課であり、その日もそうしていた。
彼女が部屋に入ってきたので、また紺ハイソの話でもしに来たのかと思ったが「今日の放課後にやりましょ」と。
「へ?」と疑問符を返してしまった。
「見てあげますよ」、という言葉でやっと思い出す。
その日の放課後に、誰もいなくなった俺のクラスの教室で行われた。
机を一つ挟んで向き合う形になって、片手を彼女に預けて、目を瞑ってくださいと言われた。
何かドキドキしてきた・・・。
ちょっと可愛い女の後輩と教室で二人きり。
間違いがあったらどうしようと不埒な考えを浮かべていたら、俺の手を握り締めいている彼女の手からぴくんと緊張が伝わった。
俺:「・・・どうぞ」
目を開いていいという促しらしかった。
目を開く。
少しくたびれたような表情で彼女はいた。
俺:「何が見えたの?」
後輩:「はい、ええと、何ですかね」
ちょっと言いにくそうにしてから、たははと苦笑する。
後輩:「よく分かんないです」
俺:「分かんない・・・そっか」
ちょっとがっかりした。
大して期待もしていなかったが、何かしらのコメントはあるものだと思っていたのだから。
まあやっぱそんなもんだよな、心霊体験なんてあるもんかい。
その日も一緒に帰って、他愛の無い話をして、それじゃあまた、と駅で別れた。
その夜。
彼女から家に電話が来た。
電話なんて初めてだから、てっきり惚れられたのかと思っていたが、実際はそんな可愛らしい理由ではなかった。
後輩:「分かったんです、先輩。あれがなんだったか。ざざーって揺れてるんです、表面が。最初は草原かと思いました。風に揺れる、広い草原。でも動きが妙なんですよ。なんていうか、一本一本草の折れるところが変なんですよね。滑らかに曲がってなくて、何なのか、よく分からなかったんですけど、すごくイビツで、気持ち悪い。」
後輩:「あれ人間の腕だったんですよ、先輩。人間の腕だったんです。腕だけ、地面から生えてる。びっしり。手がゆらゆら揺れて、なんだか、ああ、あれ呼んでるんだ。おいでおいでしてるんです。びっしり生えた腕がおいでおいでって」
もう少しだけ続く。
話はさらに変わり、大学時代、俺にとっての現在へと移る。
車の免許も取り、俺は大学へよく車で行くようになっていた。
家族共用の車で、ある日修理に出すことになった。
雹が降った際に一部が凹んだからだ。
保険の適用内なので特にこれといった出費も無かった(ハズ)。
しばらく修理に出すようなので、うちに代車が置かれることになった。
わりと新しい車で、修理に出した車よりもグレードが高いようにも思えた。
新車を得た気分で、ドライブも自然と楽しくなる。
ウキウキ気分で大学の仲間と食事に出かけた。
もちろん代車で。
ご飯も食べて満足したところで、みんなを大学寮の前で降ろしてやった。
その時である。
後輩の一人が小さく呟いた。
これ言っていいのかな・・・。
返事を待たず、そいつは続けた。
「先輩、窓ガラスにメチャクチャ手形が付いてるんですけど」
コンビニ前に車を停めたおかげで、明かりが微妙な角度で入ってきた。
それによって、窓ガラスにびっしりと子供の手形がついているのが確認できた。
本当に隙間の無いくらい、左右のガラスにべたべたべたべたべた。
最後の話は最近あった話です。
ネタ臭いところがあると感じられても、全て自分が本当に体験した話です。
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