男性の『一部分』を探して

カテゴリー「心霊・幽霊」

先輩から伺った話です。

職場の近くで交通事故がありました。

日曜日のお昼のことで、かなり大きな事故だったようです。
その影響で道路は通行止めになり、客足はぱったりと途絶えてしまいました。
稼ぎ時に起きた突然の事故に、私の職場(地方の観光地)は大打撃を受けたので、よく覚えています。

そして、ここからが先輩の体験談になります。

その後、夕方になっても通行止めが解除されず、他の従業員さん達と「やけに長いね」と話している時、電話が鳴ったそうです。
出たのは先輩でした。

『すみません、落し物をしてしまったんですが』と、電話の相手は切り出しました。

声から推測するに、年配の男性のようだと思ったそうです。
落し物や忘れ物を探す電話はかなりの頻度であるので、先輩はいつもの調子で「何を落されたのですか?」と尋ねました。

・・・が、返事がありません。

「あの、お客様?」と声をかけたところ、電話はぶつんと切れたそうです。

不思議に思ったそうですが、ちょうど同じ頃に通行止めが解除され、足止めをくらっていたお客様が一気に押し寄せたため、あまりの忙しさにそんなことも忘れてしまったそうです。

数日後、事故の詳細が知らされました。
事故に遭ったのは50代後半の男性で、乗っていたバイクが転倒し道路に転がったところを、後続のトラックに轢かれて亡くなった、とのことでした。

ここまでならただの事故なのですが、どうやらその男性は、トラックに轢かれた衝撃で、バラバラになってしまったようなのです。

長く続いた通行止めは、何処かへ飛んでしまった男性の『一部分』を探していたために起きたことでした。
その『一部分』は道路から少し外れた、林の中で見つかったそうなのですが、その時間というのが、ちょうど先輩が妙な電話を受けた頃・・・。

電話の相手の『落し物』とは、一体なんだったのでしょう。

単なる偶然や、タチの悪いイタズラなのかもしれないけれど、嫌な想像をしてしまったと、いつも明るく気さくな彼女にしては珍しい、重々しく暗い表情で先輩は話を締めくくりました。

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