中学生の時の話。
俺とこの学校は全校参加で山歩きする行事があったんです。
ハイキングと登山の中間ほどのキツさのもので、超絶ハードな遠足。
経験豊富なOGが要所で見守っててフォローしてくれる体制。
山のコースに突入する前は、ただのウォーキングみたいなもんだから、初参加の一年生は、自分等のいでたちを笑う、ムダ口たたく余裕もある。
頭にヘッドライトつけた姿で行列ってのが、非日常過ぎでテンションあげだった。
でも、いざ山歩きの段になると、アスファルトじゃない傾斜路を行くことでいっぱいになって、皆寡黙になる。
横に並べる幅もないんで、各人のペース毎に少しずつ離れて、孤独な感じの登山になった。
はっきり言って退屈。
俺は自分の足元だけを見ながら、「しんどいなーとか、早く終わりてーな」とか、そんなことばかり考えてた。
俺はペースの遅い生徒の先頭近くを歩いてたんですけど、振り返った時にヘッドライトが電池切れかで点灯してない奴を見つけた。
見守りのOBさんに、それを告げて自分はそのまま歩いた。
俺は何となくソワソワした気分になった。
いくら卒業生の先輩方が見張っていてくれたり、大勢の友達と一緒だって言っても、慣れない登山に耐えるのにいっぱいいっぱいで、誰もが無口になって、真っ暗な山の中で大勢の少しあがり気味な息づかいだけ聞こえる。
正直不気味・・・。
自分、いつも誰かとコミュニケーションとってないと不安な性格なんでこの状況はかなり辛い。
みっともないのを承知で、つい後ろを振り向いては知ってる友達の様子を確認して・・・を何回かやってるうちに、足がもたついてコケタw
すげーかっこ悪いんで、大袈裟に痛がってみたw
すると皆立ち止まっちゃって、ダイジョブー??なんて心配してくれて、俺内心「やべっw」と思って、「ちょっと打撲だからだいじょぶ!」などと健気を装って何人かやり過ごして、ついでに休憩とってたw
大袈裟に怪我人騒ぎになると困るんで、よっこらしょと立ち上がってまた歩き始めたんだけど、一列になった集団の最後尾になっちゃった。
かなーり後方にOBらしき人の放つライトの光り。
つまり、自分の後ろには幾メートルかの大自然の暗がりの空間が鎮座ましましておられるわけでして、もう、完全に精神的にアウト・・・。
もう何とか自分を励まそうと、エロイこと妄想してみたり、妄想してみたり、いろいろ努力したんですよ。
しかし、「怖いんだってばよ!」ってゆー気持ちに勝利されてしまいまして、足が、ガクガクしてきて、気力がすーっと抜けてく。
ふっと振り向くと、さっきよりOBのライトが近くにある。
自分のペースが落ちたお陰で間隔が詰まったわけで、こりゃ良いと思って俺はさらにペースダウンしてタートルの歩み作戦を決行することにしました。
目を凝らすと、そのOBは複数人を引率していました。
「カッコ悪いダメなやつはおいらだけじゃない。ぼっちじゃねえんだよ・・・」と、気分上々になってきましたw
間もなく、OBさんが俺に追いついてくれまして、「おーい」と声をかけていただきました。
人の気配と温もり。
ありがたや。
「お前一年生かー!なん組だー!?」
機嫌良くぼくは返事しました。
いよいよ距離が縮まって人の一団が黒々と判別できます。
あれ?・・・・・・・・・えっ?・・・!!!!
そのOBの引き連れてる生徒はヘッドライトも懐中電灯も無しで歩いてる・・・。
しかし、近づいて来たその集団をよく見ると「生徒」って感じではない。
大人っていうか・・・ジジイ、中年、おばさんらしき人もいる。
明らかに”おかしい”・・・。
俺は鳥肌立って、恐慌状態になった。
「うわあ、うわあーっ」と叫び、猛烈ダッシュ。
そしたら、またコケタwんでも、すぐ起きて猛ダッシュ。
これを永遠に繰り返してるように感じた。
そして、先を行ってた友達の列に追いついたw
「ど、どうした?なに?!」
そりゃもう皆びっくり。
俺:「ぜー、ぜー、はーはー、ひーひー、」
俺:「OBが・・・・」
友達:「怪我した?誰か落ちた?え、何なの」
俺:「いや、ちがうけど・・・・」
俺らが立ち尽くしてると、そのOBさんが追いついた。
俺が異様な目つきで見たせいだろう・・・OBさんは絶句して俺を見てる。
一緒にいた人達は「どうしたんですか?」って聞きたかったけど、OBさんが歩き始めたんで、皆も続いた。
俺はずーっと、後ろにいるOBさんをチラチラみてた。
暗い山で猛烈ダッシュしたということで、行事終了後、担任とOBの方々にめちゃ叱られた。
理由は聞いてくれなかったです。
山男達の神経の太さには俺の言い分なんて意味ないんでしょう。
俺はすっかり顔を覚えられてしまい、OBの山男さん達から「やるきスイッチ」とあだ名頂戴致しましたw
毎年、登山途中で俺がだれていると、腕をツンしてくれますw
あの日OBが連れて歩いてたのが、登山者だったのか、それとも生きていない人達だったのか、俺は知らんです。
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