自分は今まで心霊体験なんか全くなく、30数年を過ごしてきました。
今から6年前の4月、仕事で博多に長期出張の間に経験した出来事です。
自分にとって初めての長期出張。
仕事は営業マンで給料も結構貰っており、住まいも博多駅から歩いて5分。
全○空ホテル斜め前の交番を少し入った公園の向かいのマンション。
立地もいいし家賃はほぼ会社持ちで、とにかく毎日のように浮かれて、中洲や博多駅近辺で呑んで騒いで、福岡を満喫していました。
その頃自分は、携帯の出会い系サイトや伝言ダイヤルみたいのを使って、『東京から来ました、友達になりませんか』みたいな書き込みを散々して、新しい土地での出会いや遊ぶ為に一生懸命。
そんな引っ越して間もない頃に知り合ったK子。
最初はメールからでしたが、短い間で急接近し、お互いに彼氏彼女持ちだけど遠距離中だと暴露。
でも会いたいねみたいな、ラブリーな関係になっていました。
K子は熊本県の八代というところの有名ショッピングモールで働いていて、たまに福岡の天神に買い物に来るとのこと。
そこで5月中旬にK子が連休を取り、いきなり3日間一緒に時間を過ごすことに。
約束の日は平日の夜。
待ち合わせの場所に赤いシ○ックに乗ったK子が到着。
まだ顔も見たことのなかったK子は、とても綺麗なスタイルの良い女の子。
自分のマンションの前の公園脇に真っ赤なシ○ックを停めて、居酒屋で呑んでから部屋で過ごすことに。
普段その公園は路駐の車がいつも沢山あるので、なにも気にせず路駐して時間を過ごし、朝を迎えて、自分だけが会社なので、彼女を部屋に残して家を出ました。
会社で仕事をしていると、K子から電話が入り、なんだろうと思い折り返す。
すると、赤いシ○ックがレッカーされたとのこと・・・。
ついてないなぁ・・・と思いながら話していると、他の車は昨夜から停まっているのにそのままだと怒ってる。
変なこともあるなぁと思いながらも、次の日が土曜日で休みなので、一緒に車を取りに行こうと話して、その日は普通に2人で過ごし終了。
翌日の朝、2人で車を引き取りに向かい、そのまま天神でデートすることに。
自分が運転しようとシートに座ると、右のドアのモノ入れみたいなとこにスーパーのビニール袋があって、ドアを開けた時にゴソリと床に落ちました。
「何これ?」
特になんとも思わず聞いてみると、K子は「それ塩なんだ」と。
どうやらK子の話では、昨年デートをしていた時に事故したとのこと。
詳しく聞いてみると、この車は中古の車で、2年程前までK子は福岡で働いていたんだけど、人事移動で現在の八代に。
その少し前に、福岡で車を購入した。
事故は一回ではなく、その前にも男性が運転していて事故をしていて、かろうじて彼女は怪我をせずに済んでいるが、一回は男性が骨折までして、フロントガラスまで割れたらしい。
それからは車を停める時には、必ずハンドルとタイヤ4つに盛り塩をしているらしい。
しかし、自分はその赤いシ○ックに不思議というか変な感覚を覚えた・・・。
それからも彼女は、三週間に一度づつ三連休を取って泊まりに来ていました。
平日に来ることが殆どで、自分が車に乗る機会はなかったのですが・・・。
ある日2人で、海沿いのアウトレットへ買い物に行きました。
そして、自分が車を運転して帰る途中のこと。
自分:「ねぇ、なんか車から変な音しない?」
彼女:「最近なんか変な音するんだよね。昔もあったけど、ほっといたら治ったから平気だよ」
自分は車に詳しくはないですが、なんだか不完全燃焼しているようなそんな感じ。
「一度ディーラーとかに見てもらった方がいいね」などの会話を覚えてる。
そしてある休みの日の午前中、K子が泊まりに来る為に、『車で今から出発するよ!』との電話。
その頃はもうお互いを恋人と思っていたので、楽しみでしょうがないのだが、彼女が出発して数時間後に再度電話が鳴る。
『どうやらさっきからブレーキが効かないんだけど、どうしよう・・・』
高速道路でブレーキが効かないなんて、大の男でも焦る状況。
自分は電話で「とにかく左車線に寄って、そのままアクセルを踏まないでウインカーを出して、惰性で停まるんだよ!その間にJAFを呼ぶから、いまどの辺りなの?」なんて会話をしていた。
ちょうどインターを過ぎた辺りだったので、思ったよりも早く救出されひと安心。
車は現地近くの車屋さんに修理を頼み、K子とは電車で向かった自分と合流。
K子は憔悴しきった表情で涙ぐんでいた。
修理は数日かかるところを、事情を話し3日間でお願いし、K子と自分は自宅へ向かいました。
帰りの電車でK子がぐったりしながら、「あの車おかしいのかなぁ。なんだか、○○に会いに来るときにいつもおかしくなる」と。
実は、ブレーキがおかしくなったのはこれが初めてではなく、アウトレットに行った先日も、高速でブレーキが効かなかったとのこと。
そして昔の男性との事故も、2人で乗った時に事故を起こしていた。
自分もうすうす感じていました。
車が・・・赤いシ○ック嫉妬してるんじゃないか?って。
そして8月、ついに自分にも5連休の休みが取れたので、今回は自分が初めて八代に泊まりに行くことに。
お昼に出発した自分が八代に着いたのは夕方頃。
都内で生まれ育った自分には、ビックリするくらい長閑な場所。
彼女とメールで連絡をとり、あの赤いシ○ックで迎えに来てくれた。
彼女の住まい近辺には何にもなく、買い物さえ車がないとどうしようもない場所でした。
しかも、残念ながら5日間ともK子は仕事で・・・販売だからかき入れ時は休めない・・・だから、自分が帰る最終日の1日前の夜まで、夜食以外はずっとK子の部屋で過ごしました。
本当に素敵な時間を過ごした最終日前日の夜、自分は電車で帰るので、最後は熊本ラーメンを食べに行きたいと、2人で外出しました。
そのお店は、八代駅に向かう途中のちょっとした繁華街の、脇道を入ったところにありました。
駐車場がないので、繁華街の四車線の広い道路に車を路駐。
ラーメンを食べてから車を停めた道路へ向かうと何故か・・・停めた車の辺りに人だかりが・・・。
しかもパトカーが停まってる・・・。
自分はとっさに、「路駐で捕まったかなぁ、ごめんね」などK子をなだめてた。
でも近くに行くと様子が違う。
車は運転席側が半壊。
助手席側もドアが開かない状態・・・。
お巡りさん:「これ、君達の車かね?」
自分:「はい。何があったんですか?」
お巡りさんに教えられて前方を見ると、100メートル程先に傾いた車。
お巡りさん:「酔っ払い運転で当て逃げだよ。逃げようとしたけど、車がダメになって向こうで停まっているよ」
そんなやり取りの間中、「どうして・・・どうして・・・」とずっと泣いていた。
お巡りさんがK子に、「車検証出していいかな?ちょっと拝見するよ」と、割れたドアガラスから車検証を取り出す。
お巡りさんは「この住所がお宅の住所かな?」と聞かれ、自分はわからないのでK子に問いかけると、K子は「知らない・・・そんな住所知らない・・・」と、心ここにあらずという感じ。
住所には熊本県八代市○○。
その住所を見ても自分には何もわからないが、お巡りさんは「住所はこの辺だなぁ・・・」と。
自分:「いやっ、○○ホームセンターの方で、この辺じゃないですよ」
お巡りさん:「あっ!これは前の人の住所だねぇ。こっちの八代市○○が君の住所かな?」
K子に再度問いただすと、泣きながら何度も頷く。
自分:「えーっ・・・その前の住所って何?」
自分はその住所を見て電信柱の住所を見ると・・・「えっ・・・この辺の住所じゃん。これって、この赤いシ○ックの前の持ち主の住所だよね。」
K子はその時も、車が潰れたショックで全くそのことを不思議に思わないようで、泣いていた。
その後警察に連れて行かれて、聴取みたいなのを受けるのと、相手が酔っ払いなので、相手の迎が来てから謝られて、結局帰りは午前3時過ぎ。
タクシーで彼女の部屋に戻り、彼女を落ち着かせようと必死だった。
でも頭の片隅には、車検証の住所のことがいっぱいで・・・。
次の日、K子が仕事に行く時に、タクシーで二人して出発。
K子を下ろしたあと駅に向かう途中で、どうしても住所のことが腑に落ちないので、運転手さんに昨夜の住所を告げて向かってもらった。
タクシーが着いたのは・・・昨夜の事故現場が見える場所。
信じられないくらいにすぐ近く。
自分は昨夜の住所の家を探そうと歩き出す。
するとその家はすぐに見つかった。
立派な2階建ての家で、入り口が細い竹の格子の玄関。
自分はとても迷ったけれど、思い切ってチャイムを鳴らしてみた。
出て来たのは50才そこそこのおばさん。
自分:「大変突然で失礼なんですが」
自分は失礼なのを承知で、昨夜の事故の事、自分がもうここに来ることはないこと、そんなことから話し始めました。
するとおばさんは事故の事を知っており、事故の時に現場に来ていたとのこと。
なかなか話してくれなかったけれど、それから小一時間おばさんと話しました。
そしてここからは、おばさんの話と憶測です。
おばさんには息子さんがいて、数年前に亡くなっていました。
その息子さんは自分で買った赤いシ○ックを本当に大切にしていて、毎週庭で洗車する姿を良く覚えているそうです。
ある日、息子さんは赤いシ○ックで運転中に、事故に巻き込まれ亡くなった。
その後車は熊本で売却。
そして昨夜の事故。
自分が感じたことは・・・。
K子は赤いシ○ックを本当に大切にしていた。
そしてその赤いシ○ックには、おばさんの息子さんの思いが今でも残ってる。
息子さんは、K子に愛されることを喜んでいたのかもしれない。
なのにK子は違う男を車に乗せる。
愛するこの赤いシ○ックとK子に男が。
K子は福岡で赤いシ○ックを買ったあと、八代に呼ばれたのではないか?
自分のそばに来て欲しくて。
そしてたぶん、息子さんは嫉妬していたのだろう。
自分もいなくなって欲しかったのかもしれない。
その後、事故を起こした相手の保険屋さんとの窓口を自分がやり、ローンは少し残ったがK子は新車に乗り換え、納車が済む頃にはお互いに連絡もしなくなった。