今の家に越してすぐだから、今から7年前の話。
怖いというか、何だったんだ?って話。
当時越してきたばかりで娘は3歳だった。
平日休みとって娘と家の前で遊んでた。
シャボン玉してるのをビデオで撮ってたんだけど、急に娘が振り返って手を振ったんだ。
俺はカメラ越しに娘見てたんだけど、もう友達できたのかなって手を振る方見たけど誰もいなかった。
それからなんだよね、男の子としばらくの間過ごすことになったのは。
マッシュルームカットで白のランニングシャツに白の短パンで裸足。
その子を見る時はいつも娘と一緒だった。
娘も見てたから錯覚とか思い違いじゃなくて、間違いなくその時は男の子が存在してた。
何かされたり、何かしたりとかはなくて、いつもどこか一点を見つめてる感じ。
家の間取りというか寝室は2階にあって、2階に上がる階段は半分上がったとこで折り返すタイプ。
分かるかな。
当時は嫁と娘と川の字で寝てたんだけど、ある日夜中に娘がトイレで起きたんで連れて行ったんだ。
2階のトイレは階段を上りきったところにあって、トイレに入る時に階段の折り返しの所が見えるんだけど、ちょうどそこに男の子がいてこっちをじっと見てた。
何となくやばいな・・・って感じがしたんで、娘が気づかないようにトイレに押入れたんだけど、娘も気づいたみたいでトイレから顔だして、その男の子に手を振ってた。
とにかく、早く寝室に戻りたくて急かしておしっこさせてたんだ。
当時はおしっこの後、俺が拭いてあげないといけなかったんで、トイレしてる娘の方に向いてしゃがんで終わるの待ってた。
ところで、後ろを人が通った時って風を感じるというか、そういう感覚分かるかな。
娘がトイレしてるの待ってた時に、すっと風を感じて男の子が後ろに立ってるのが分かった。
頼むから娘は気づかないように・・・って思ってたんだけど、娘もやっぱり気付いてて、ひょこっと顔を俺の体の向こうを見るようにしてまた手を振ったんだ。
なぜか分からないけど、やばいって直感はあって、終わったらすぐに娘を抱っこして寝室に戻ったんだ。
寝室のドアを開けて部屋に入ると、部屋の真ん中に男の子が三角座りで座ってて、ベッドの方を見つめてた。
嫁はそういうの感じないから、男の子がいるってのを嫁に気づかれないように何も言わず娘を寝かしつけた。
それからしばらく眠ってたんだけど、金縛りに遭って目が覚めた。
いつもは疲れてるのかなって、何も気にせず無理やり体を動かしてまた眠るって感じなんだけど、その時はやばいっていう感覚がずっとあって、「娘が危ない!」って思った。
体は動かないんだけど・・・目だけ隣で寝てる娘の方に向けると・・娘が目に入る前に影が視界に入ったんだ。
電気を消した中でもはっきり人型って分かる真っ黒い影が、壁から胸から上だけを出して娘を覗き込んでた。
呪怨って映画のシーンそのままだった。
体を動かせない俺は見てるしか出来なくて、その影は頭をゆっくりと娘の顔に近づけていったんだ。
もう少しで娘の顔に当たるって時に娘がばっと目を覚まして、その影を見た瞬間に大泣き。
俺は金縛りがその瞬間とけた。
その影は真っ黒だけど男って分かった。
しかもいつも現れる男の子じゃなくて大人の男。
とにかく娘を抱っこして下の階に行って、少しおもちゃで遊ばせたりして落ち着かせてたんだ。
しばらくそうしてる内に娘も落ち着いたんで、寝室に戻ってもう一度寝かしつけた。
幸い何もなく娘も眠りについた。
少し疲れた俺は下に行ってタバコを吸ってたんだけど、また娘の泣き声がしたんで、慌ててタバコを消して寝室に行った。
嫁が娘を抱いてたんだけど、何となくいつもと雰囲気が違うのに気づいたのか嫁も怖がってたんで、俺が娘を抱っこして落ち着かせてたんだ。
俺は壁に背を向けてベッドに座って娘を抱っこしてた。
すると、娘が壁を上下左右キョロキョロ見渡して、「何でお友達こっちに来ないの?」って聞いてきた。
どうやら壁の中に男の子がいて、ふらふら壁の中を浮いてるらしい。
「大丈夫、お友達はもう遠くに行くんでお別れ言いにきたんだよ」って、3歳に分かりもしないような話をして安心させようとしてた。
もうその頃は朝方だったんだけど、ようやく何も起きなくなって少しだけど寝れた。
不思議とその日以降、男の子も現れなくなったんだけど、一度だけ現れた男は一体何だったんだろう。
家は新築で山を切り開いた場所だから、土地うんぬんじゃないだろうし。
今思えばシャボン玉の時に、男の子の存在に気づいた娘が連れてきちゃったのかなって思う。