平山夢明の東京伝説~閉ざされた街の怖い話~から。
小学生の時「親子ゲーム」と呼ばれる妙な遊びが流行った。
狙った家に電話して『○○ちゃんが車にはねられて病院に運ばれた!」と叫び親が慌てる様子を見学する、というものだった。
大体の親は告げられた病院へ血相を変えて飛び出していく。
その様子を見て大喜びするというのだ・・・。
その遊びをしていると噂のある子はみんな成績がトップクラスの子ばかり・・・。
多分勉強のストレスを歪んだ形で発散させていたのだろう。
当然学校は問題視し、禁止したがゲームは終わらなかった。
ある日、そのゲームが大変な事態を招いた。
ある母親が電話を受け、慌てて自転車で駆けつける途中、一時停止を無視し飛び出したところをトラックにはねられ重症を負った。
その母親は旦那さんを交通事故で亡くしていた。
もしも息子までもが事故で・・・と思うといてもたってもいられなかったのだろう。
一時は意識不明の重体にまで陥った。
ある子がゲームをしている子たちが校舎の裏で輪になって集まっているのを偶然見た。
全員が笑っていたという。
学校が犯人捜しにやっきになったが、結局犯人は見つからなかった。
だがこのゲームは唐突に終わりになった。
ある時、リーダー役の少女が自分の家に電話をさせたのだという。
思いっきり心配させてやろうと「死んじゃった!」と泣いてみせた。
だが、母親が「はい、わかりました」と普通に答え、すぐには病院に行かず、買い物に出かけてしまった。
帰宅したリーダーは母親に、なぜ慌てないのか問い詰めると「だって死んだのなら急いだって仕方ないし、お葬式の準備もしなきゃならない。お姉ちゃんの受験もあるし、つまらないことで騒ぎたくないの」と、母親はしれっと答えた。
それからリーダーの子は成績が急に落ちだし、高校は志望校どころか公立すら受からなかった。
レディースに入り、無茶な暴走のあげくに事故で死んだという。
同級生たちに葬式の案内もなく、いつどこでやったのかもわからないありさまであった。