パンプキンタワー

カテゴリー「心霊・幽霊」

十数年前の話。
当時、大学生3年だった俺、キヨシ、後輩ヨシオは相変わらず下らない話で盛り上がってた。
キヨは最近、自称霊感が強いという彼女ができたらしい。

兎に角、その彼女曰く、国道沿いにちょこんとある山の中腹には、『パンプキンタワー』なる廃屋があり、兎に角『ヤバい』らしい、という話だ。
ヤクザの取引場所になってる、自殺者の霊が出る・・・等々。
盛り上がった俺らは嫌がる彼女を呼び出してもらいその日の22時懐中電灯片手に急遽出発した。

山はバイパスで車がバンバン走っており、「らしい」雰囲気は皆無だった。

とりあえず車を山裏に止めると軽自動車が止まっていてキヨの彼女が合流し、4人で鬱蒼とした林へ入り込んだ。

腰まである藪に苦戦しながら探索していると少し離れたところからヨシが「これじゃないっすかーー!?これ!」と叫んだ。

ヨシに近づいてみると林の中に170cmくらいの門、その奥には獣道が伸びていた。

俺:「うわー見つけちゃったよ・・・」

キヨ:「はやくいくべ。」

暫く恐る恐る獣道を進んでいくと、急に視界が開け、竹林に囲まれた朽ちた東屋を見つけた。
林の先にはバイパスがあるのかヘッドライトが頻繁に過ぎる。

何だこんなのか、と4人を安堵と少しの失望感が襲った。
とりあえずそこで喋っていると、

キヨ:「おい!!こっち!!こっちだ!!やべーの、あるぞ。」

少し遠くから上の方を照らしながらキヨが叫んだ。
キヨのライトの光を追うと一角だけ南国のような植物が生えていた。
その庭の上を照らすとその少し奥にかぼちゃの色の建物が浮かび上がった。

まるでサザエさんのエンディングに出てくるような家を縦に伸ばしたような塔。

俺:「おおおおお!あったー!」

ヨシ:「やべーっすよ。本当に見つけちゃいましたね。」

彼女:「怖い怖い怖い、ぜったい無理!!帰ろうよ。マジ無理。てか帰る。」

キヨ:「とりあえず洋館に向かう道を探そうぜ。」

南国植物の庭を探っていると小さな門があった。

そこを抜け暫く進むと林に囲まれた広い場所にパンプキンタワーは建っていた。
直ぐに俺らは探索を始めた。
3階建ての塔は意外に狭く、各8畳程度の部屋の横に洋風の階段がついた造りだった。
部屋は全てベッドがある。
半分割れた3階の窓から外を照らすとちょうど先ほどいた東屋も見えた。
4階には屋根裏部屋らしき窓が見えたが階段は、無かった。

ヨシ:「あの白いのなんすかね?」

俺:「お、幽霊出たんけ?」

3階からあたりを照らしていたヨシが東屋の奥の竹林に2~3M四方程度のコンクリートらしい物を見つけた。

とりあえず後で戻って見てみよう、となり、一階に。
一階の階段奥には和風の長屋が続いており、廊下の突き当りにはなぜか屋内に呼び鈴がついていた。
呼び鈴には『○○―ヲ1カイ、○○-ヲ2カイ~~、メシ』などと意味不明なことが書いてあった。

廊下に連なる部屋には古い雑誌や新聞が散乱し、キヨと彼女はそこを見ていた。
とりあえずヨシと長屋方面から出ると正面には井戸。
そしてその奥はまた林が広がっていた。

ヨシが叫ぶ。

ヨシ:「げー!!井戸すよ井戸!!貞子!!」

ふと、空を覆う林の影が切れている箇所を見つけた。
近づくと林に隠れた石階段があり、俺はヨシと見に行った。

階段を登りきると剥げた赤い鳥居と正方形の石畳の空間があった。

ヨシ:「うわっ!鳥居!?」

俺:「何か嫌な場所だな。引き返そうで」

戻ると階段下に二人の人影があった。

キヨ:「ヤバい。置いてある雑誌が戦後だったわwww」

お互いの顔も良く見えない暗闇の中だった。
時折、大型トラックの音は聞こえていた。
その音に安心していたのか俺らは結構明るかった。

そろそろ12時近く。
とりあえず帰ろうとするとキヨの彼女が「そういえば、塔の階段裏にも何か蓋があったね。あれ、地下室かな・・・」と言い出した。

『え!?』

俺らは顔を見合わせた。
といっても暗くて雰囲気だけだが。

地下室・・・その言葉に俺らはワクワクした。
再度塔に入ると確かに階段裏には木の1m程度の蓋があった。

蓋には指を入れるような穴があり、枝でテコの原理で押し上げるとすんなり空いた。
早速怖いもの知らずのキヨが覗きこんだ。

穴の下は2M程の高さで6畳半程度の正方形の空間になっており、壁はコンクリート?土壁のようにも見えた。
簡素な木の階段がつけられていた。

中には岩があった。中心に天井まで届く大岩。それをぐるりと注連縄が囲っていた。
思わず絶句する俺ら。

すると一緒に覗いていたヨシが「石の裏になんかいます?いません?動物かな。ねえ、何か見えないすか?」

確かに何か蠢いている。
二つのライトの光が動いているせいかもしれない。

何か『ブッ、プッ』と息が漏れるような音も聞こえるような気がした。

その瞬間、『ジーーーーーーー!!』

突然、階段脇の長屋の方から何かが鳴った。
何故か俺はチャイムだと思い、『ち、チャイム?』とつぶやいた。

それと同時に全員が外へ逃げ出した。

「こえええええ!!」

「何、今の!?何だ?」

「チャイムだったよな!長屋のやつ?」

「え、押してねーべ?」

「いや、いただろ全員!!」

「やべー!帰るべ!」

4人は確かに階段裏に集まっていた。
誰がチャイムを?いや、あれはチャイムだったのか?
そんな興奮が覚めない。
そんな中、急にヨシが黙った。

気が付いた俺も硬直する。

キヨはの後ろでTシャツの裾を掴んでいる彼女。

その女が長いのだ。

不自然に引き延ばされて、180の俺よりぬっと細く高い。
そして沈黙になって初めて、先ほどの空気が漏れるような音が続いていた事に気が付く。

ヨシが突然、「行きましょう!!?俺、帰りますわ!!」

俺:「え?え?キヨどーしたん!?」

キヨ:「は?お!?おおおおおお!!!!!!」

ヨシが静寂を破ると同時にパニックになり、慌てた俺らは林の方まで逃げて懐中電灯を右左へ動かす。

「そこそこそこ!!」

交差する光が一瞬、少し離れた所にいた女を捉える。

異常に細長く、馬のような顔をした女。

「え!誰!?誰!!」

「行くぞ行くぞ行くぞ!!」

俺らは脱兎のごとく逃げ出し、固い葉で傷だらけになって東屋まで逃げた。
再びバイパスを通過する車の光が見え、安心した俺らはキヨの彼女?は・・・。
どうするどうする、と狼狽した。

キヨは話ながら少し携帯を弄っていたが、急に思いついたように塔を照らした。
そこでイヤなものを見た。

3階の窓からこちらを覗く影。

ちょうど窓の少し奥から、『一』文字に。
あの女は首を傾げてこちらを覗いている。

俺達は無言で再度逃げ出し車へ辿り着いた。

彼女の車は無かった。

翌日、もちろんキヨの彼女は無事だった。
・・・と言うより、東屋へ俺らが逃げた時点でキヨが電話をかけようとしたら「気持ち悪いから帰る!!もう知らん。寝る。」とメールが届いていた。
俺らが塔へ向かう時点で声をかけたが、どんどん進むので怖くなり、道路が近い場所からそのまま帰ったそうだ。

二人はお互いに気味が悪くなったのか、そのまま別れた。
俺とヨシは暫く肩を内側を押し絞められるような症状が続いた。
細長い女とはあの後、キヨが一度だけ遭遇したらしい。

小さな街で噂は少しだけ広まり、仲間の何人かが突撃した。
連中曰く、塔から東屋の竹林に広がっていたコンクリート群は『檻』だったそうだ。
鉄格子がついたコンクリートの檻。
ある奴は檻の下から何かが覗いている、のを見た、と言い、また別に地下室まで辿り着いた奴もいた。

地下は濁った水で埋まっていたそうだ。

卒業後、キヨは上京し、俺も街を離れた。
ヨシとは勤務先が近く、飲み仲間だ。

あの奇妙な建物はその後、壊されたとも、警察が封鎖したとも噂され、いつしか聞かなくなった。

以上、フェイクも混ぜていますが半分実話です。
ずっと書こうか迷ってました。
あの女には二度と会いたくない反面、何故かあの廃墟に惹かれるのです。
誰が、何のためにあんなものを作ったのか・・・。

突然の駄文、長文でのお目汚し、本当に失礼しました。

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