高校時代の親友、高橋、小野田、三木が殺された。
この2年の間にだ。
迫田から電話が掛かってきた。
俺たち5人は高校3年間を通じての親友だ。
迫田:『み、三木が殺されて一週間だね』
俺:「ああ。惨殺だったらしいな。あまりに猟奇的で、報道規制がしかれてるらしい。テレビでは『ただ殺された』としか言ってない」
2年前、最初に高橋が殺されてから、すぐ迫田から実家を通して連絡があった。
アルバムで見つけて掛けたらしい。
それからもう2人が殺された。
俺:「次は俺かな」
迫田:『ちょっと、怖いこと言わないで。お願い』
迫田は相当怯えているように聞こえる。
俺:「まあ、気をつけるに越したことはないからな。ちょっと出てくるわ。じゃ、また」
俺は電話を切った。
マンションの玄関を出ると、お隣の川田さんがちょうど出てきた。
最近引っ越してきたばかりのきれいな女性で、時間帯が合うらしく、よく廊下であって話をした。
俺:「こんにちは」
俺は挨拶をすると、そのまま「そういえば猟奇殺人の、この間話した」と続けた。
「ええ、あの惨殺事件ですね」と彼女は言った。
俺:「ニュースを色々見たんですが、猟奇殺人と言っているニュースはありませんでした。だから実は、普通の殺人なんじゃないでしょうか」
なんとなく気まずい雰囲気になったので、「それでは」と話を打ち切って、エレベーターへ向かった。
その後、迫田が転落死した。
自殺だ。
A美から「最近夫の様子がおかしい」と相談されたのは数週間前。
最近、ぼんやりと何か考え事をしているようなことが多く、夕食の後には自室に篭って、パソコンで何か書いているらしい。
聞いても「仕事」の一言。
A美:「浮気かなあ?」
そう聞かれたので、「今度、部屋調べてみなよ」とアドバイスをしておいた。
そして今日、A美から、かなりおびえた様子で電話が掛かってきた。
A美:『きょ、今日、へ、部屋入ってみた。夫の・・・』
俺:「落ち着きなよ。浮気の証拠見つかった?」
すこし間があって、A美は『わたし、怖い・・・』と言った。
彼女が夫の部屋に入ると、机の上に無造作にノートが置かれてあった。
中にペンが挟まっていたので開いてみると、乱雑な字で色々と書かれてあり、矢印や図の様なものも書き込まれていたそうだ。
A美:『走り書きで・・・、『三人惨殺』って書いてある』
背筋が凍った。
『ほ、他にも、『撲殺』って書いて消した跡とか・・・『人を恐怖に陥れるポイント』っていうのがまとめてあって、『日常と惨劇のギャップ』って書いてある。
A美:『気付いた友達は自殺』ってのもある・・・。こ、これ、どういうことだと思う?』
A美の声が半分泣き声に変わっていった。
俺:「今すぐいくから、A美は一度家から出な」
正直、自分もどうしていいのかわからない。
その瞬間、携帯が小さな悲鳴をあげた。
A美:『か、帰ってきたみたい・・・、居間でわたしのこと呼んでる。怖いよ・・・。
A美:『顔を整形して隣に忍び込む』って、か、書いて、あ、あった』
声が震えている。
俺:「落ち着いて、A美!周りに身を守れそうなものない?」
A美:『木製の・・・、バットがある』
「とりあえずそれで身を・・・、」言いかけでA美の悲鳴が聞こえ、続いてギャーっと男の悲鳴が
聞こえた。
その後、彼女は逮捕された。
あなたたちにも起こりうることだから、気をつけてくださいね。
【解説】
三木が殺された時、『俺』は川田さんから「惨殺事件の話聞きましたか?」と話しかけられるが、テレビを見ても惨殺事件として扱っていないので不信に思う。
何度か話すうちに、川田=迫田ではないかと疑い始めた『俺』は、『報道されてない惨殺事件について言及した川田の犯行だと疑い始めている』ことを暗に迫田に伝えている。
前半最後の『気付いたかな』は、『(自分が真相に迫っていることに迫田は)気付いたかな』という意味。
川田にも同じ話題を振ったところ、気まずい雰囲気になったことから、『俺』は確信して、警察に向かったが、全てを悟った川田=迫田はマンションから飛び降りてしまった。
つまり、迫田が整形して川田として隣に引っ越してきていた。
そのヒントは、『顔を整形して隣に忍び込む』。
迫田の性別に関して言及はなく、もとから女性。