人類の火星進出後にはきっと多くの人が体験することになる宇宙旅行だが、その際に気になるもののひとつがブラックホールの存在だ。
宇宙のあらゆるものを飲み込むブラックホールだが、もしここに落ちたら一巻の終りなのだろうか・・・・・・。
だが、安心してもいいのかもしれない。
ホーキング博士は先頃、「出られる方法がある」と発言したのだ。
【ブラックホールに飲み込まれた情報は戻ってこれる】
「もしブラックホールに落ちてしまったと感じても、命を諦めてはいけない」と、8月25日にストックホルムのスウェーデン王立工科大学(KTH)で行なわれた講演会で語ったのは「車椅子の物理学者」ことスティーヴン・ホーキング博士だ。
つまり、宇宙旅行の途中にもしブラックホールに落ちてしまってもまだ“希望”は残っているということだ。
「ブラックホールは別の宇宙へ通じている可能性がある」
講演でまずホーキング博士は、ブラックホールに吸い込まれた情報は内部に貯め込まれるのではなくて、境界上にある事象の地平面の上に投げ出されると説明している。
事象の地平面とは物理学や相対性理論の概念で、これ以上先に進むと観測不可能になるギリギリの境界面のことである。
ホーキング博士によればもしブラックホールに落ちた場合、我々はこの境界面に2次元のホログラムに姿を変えて貼りついて保存されるというのだ。
そしてこの過程で一部の情報が「ホーキング輻射」としてブラックホールの外へ漏れ出てくるという。
しかしこれによって出てきた情報はもはや再構成が不可能なほどバラバラに分解されているので、事実上は情報が失われてしまったも同然ということだ。
しかしここまでの話は昨年発表した論文のおさらいのようなものではあるが、問題はここから先だ・・・・・・。
事象の地平面でホログラムになった情報は最終的にどうなるのか?
なんとブラックホールの境界面でとどまっていた情報は、まったく別の世界、つまり“パラレルワールド”へ送られる・・・というのである。
「これまで顧みられることのなかったブラックホールの別の“履歴”の存在が、この考えを可能にします」とホーキング博士は語る。
一般の者にとってただでさえ不可解なブラックホールはさらにミステリアスな要素を備えていたことになる。
「もし、ブラックホールが広大な宇宙を周回していたとすれば、別の宇宙へ通じている可能性があるのです」と示唆するホーキング博士だが、続けて残念な指摘も行なっている。
ホーキング博士:「しかし(いったんブラックホールに落ちると)あなたはこの世界に戻ってくることはできないでしょう。私は宇宙旅行の物語が大好きですが、これがあるので自分では行きたくないですね」
つまり、ブラックホールから生還できたとしてもそこは以前までいた世界ではなく、平行して存在している“パラレルワールド”に不時着することになるのだ。
とはいえ、ブラックホールに落下することが死に直結しないというのは、これまで恐怖しか湧かなかったブラックホールのイメージを変えるかもしれない。
事実、ホーキング博士も「ブラックホールはこれまで考えられていたほど“暗黒”な存在ではなかったのです」と演説を結んでいるのだ。
ブラックホールに落ちても、パラレルワールドで“第2の人生”が待っているとすれば、宇宙旅行の不安が大きく和らぐだろう。