結構、昔の話、戦時中の話が多いです。
宜しければ。
満州から引き揚げて、新潟に居を構えたおいらの母方のじいちゃんは、犬を飼いはじめた。
終戦後の混乱はいまだに尾をひいていて、特に日本海に面している新潟辺りでは、他にも大陸から色んな人々が上陸しており、治安は決して良い方ではなかったという。
家族が住んでいた家の近くにも、それらの人達の集落が出来上がっている。
当然、番犬としての役割もあって飼いはじめたのだ。
雑種の仔犬の名前は「ピンジ」と命名された。
当時の写真を見せて貰った。
誰が付けた名前か、おいらははっきり聞いてない。
伯母さん、お袋、小母さんの三人で可愛がっていたそうだ。
引き揚げて来て、恐らくは始めてのペットと言うか、家族の一員が増えたと、みんなで大切に育てた。
何年か経ったある日、ピンジがいなくなった。
じいちゃん含めて家族全員で探して廻った。
だが、見つからなかった。
数日して、もう見つからないのかと諦めかけていた、ある日。
お袋達三人の姉妹が歩いていると、畦道の向こうに、誰のものか判らないスコップが転がっているのを、小母さんが見つけた。
その先に何か載っているのが見えたという。
小母さんは小走りに、何か確かめに行った。
「ギャーーーーー!」
という小母さんの声が聞こえた。
「ピンジーーーー!」
スコップの先に載っていたのは、犬の頭。
間違いなくピンジだった!
小母さんが取り落としたスコップから転がり落ちたその首は、「きゃん」と一言、哀しそうに鳴いたという。
三姉妹は泣きながら、そのスコップでピンジの頭を埋めた。
あいつらは犬を喰う。
人のウチの飼い犬でも平気で盗んで喰う。
じいちゃんは、そういうこともあって、今でもあの国の連中を許さないのだ・・・と、
後年、お袋から聞いたことがある。