夏というと、林間学校での事思い出すな。
俺の学校はホテルとかじゃなくて、通称『山小屋』っていう、学校が所有・管理してる(らしい。ウロ覚え)古い建物で寝泊まりする。
汚くは無いが寂れた感じで、山の中なせいか虫がやたらに入り込むのに辟易してた。
あと、何故か合わせ鏡になってる洗面所。怖くて夜中入れなかった。
まあそれはいいとして、夜、ふっと目が覚めた訳だ。
で、トイレ行きたくなった。
廊下は灯りもほとんど無いないから、正直すごい怖かったんだけど、同室の友だち叩き起こすのも恥ずかしいから、仕方なく部屋を出たんだ。
俺の泊まった部屋は東の突き当りで、トイレは西のどんづまりにある。
その真ん中あたりに階段。
と言っても『山小屋』はそんな広くないから、まっすぐ小走りに行けば1分かからない距離。
消灯寸前まで騒いでたのがウソみたいに静まり返って、虫の音しかしないのが嫌だなとか思いながら、携帯の画面の明るさを懐中電灯代わりに歩きだした。
・・・迄はいいんだが、途中から妙な感覚に包まれたんだよな。
プールに潜って歩くと、ふよふよして思うように前に行けないだろ?あんな感じ。
暗い中でもがいてるみたいにバタバタして、気づいた時には虫の音すら聞こえない。
途中から”何これやべえ”って思って焦って足に力入れまくったんだけど、トイレの灯りが近づく気配が全くない。
網の中でもがいてる魚状態。
軽くパニック状態で声も出なくて、うわあああああああってテンパりまくって手足をばたつかせてる内に、つまずいて床に手をついた。
掌に床のボロい絨毯の感触が広がって、ドサッて感じに膝をつく音もした。
そこでいきなり現実に帰ってきた感じ。
虫の音も聴こえるし、階段を下りてくる足音もした。
うわああああて思ったけど、懐中電灯持った見回りの先生だった。
驚き顔で「どうした?気分が悪いのか?」って言われた。
俺の顔色が悪かったらしい。
何とも説明しようが無かったし、我に返ったら何か恥ずかしくなったから、トイレに行こうとしたけど足元暗くてコケただけって誤魔化した。
先生は心配してトイレから部屋までついてきてくれたんだが、部屋に戻って携帯見て、もう一度ぞっとした。
部屋を出るときは2時5分くらいだったのに、戻ったときは3時半。
先生と会ってから戻るまで10分も経ってない筈なのに・・・?
俺は1時間以上どこにいたんだろう?って考えたら、その夜は全然寝れなかった。
今でも夜のその時間帯に目が醒めると怖い。
廊下になんか出れない。
あの、元の世界に戻れないんじゃないかって恐怖はトラウマ。