知り合いの話。
彼女の実家の墓所は、町外れの山の中にある。
墓参りに行く度、「一人で山の奥に入るんじゃない、神隠しに遭うぞ!」、そう厳しく言われていたという。
長じてから、その山の謂れを知った。
その山に一人で迷い込んだ者は、次の日までに消えてしまい、見つからなくなるのだと。
何となく不気味に思われて、子供たちはその山の近くで遊ぼうとはしなかった。
大学生となり、地元の歴史を調べていた時、彼女はとある事実を知ってしまった。
件の山はごく近世まで、姥捨て山として存在していたのだ。
神隠しの山を、人を捨てる地に利用したのは、誰のどのような思惑だったのか。
それとも捨てたことへの後ろめたさから、神隠しのような噂が生じ、禁忌の土地へと変わったのか。
今では、色んな意味でその山が怖いのだという。
墓参りの時は、子供たちから絶対に目が離せないそうだ。