大菩薩嶺(峠)での怪

カテゴリー「怪奇スポット」

何年か前の大菩薩嶺(峠)山行のお話です。

我々4名は裂石登山口から2時間ほど歩いた見晴らしの良い場所を選んで小休止をとりました。
湯を沸かしお茶を淹れていると、シクシクというような女性の泣き声のようなものが藪の中から聞こえてきます。

嫌な感じがしたのですが、放って行くわけにはいきませんので、藪の中を探すことにしました。
声が聞こえる範囲ですから4人で手分けすれば5分とかかりません。
数分の後、リーダーの合図で捜索を打ち切り出発することにしたのですが、Bが戻ってこないのです。

先ほど藪に入ってから10分と経っていませんから、どこかで雉でも撃っているんだろうということになり、もう少し待つことにしましたが、30分経っても戻りません。

さすがに心配になって辺りを探したのですが、全然見つからないのです。
2時間以上経過し、さすが焦り始めたころリーダーがBを見つけました。

驚くことに彼は80cm以上ある舞茸(きのこ)を背負って登山道を下りてきたのです。
Bは一通り皆に謝った後、奇妙なことを語り始めました。

Bの説明以下。
・藪に入ってすぐ声の主(20代女性)を見つけて声を掛けた。
・5分ほどの場所で連れが怪我をしているということなので助けに行った。
・途中直径15cmほどの細い木が道を塞いでいた。
・邪魔だとは感じなかったけど、女に請われるままその木をどけると彼女はある方向を指差して、「ありがとうございました。こちらへお帰りください」と言った。
・怪我をした連れは何処か?と訊ねても、「もう大丈夫ですから」って。
・少し頭にきて問い詰めたら、彼女はさっき指差した方角へどんどん歩いて行く。
・結構歩いたあとに彼女は振り返って、「本当にお世話になりました、お礼にこれをお持ちください」といってこの舞茸を指差して消えちゃった。
・そして登山道へ戻って気が付いたら2時間も経っていた。

それにしても、あいつなんだったんだろう???

木をどけた行為にどんな意味があるのかは私たちにはわかりません。
予定していた山行をあきらめて私たちは帰途につきました。

今のように舞茸が人工栽培できない時代でしたので、20kg近い天然舞茸はとても貴重品でした。
無駄になってしまった4人分の旅費以上の金額で売れたことを最後に付け加えておきます。

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