薪を切らしていたので、家の旧式風呂にくべる枝を拾いに森に入った。
それほど奥までは行かず、家が見えるくらいのあたりで薪代わりの枝を拾い集めた。
ふと顔を上げると、目の前に出来立ての小さな納屋があった。
家の者は納屋を作るなどとは誰も言っていなかった。
不審に思い引き戸を開けてみると、作り付けの棚の上に小さな陶製のお稲荷さんが五十体以上づらりと並んでいる。
分けがわからないので薪拾いを続け、先ほどの場所へもどった。
今度は納屋が無くなっている・・・。
首をひねりつつ家へ帰ると、祖父が庭で落ち葉を燃やしていた。
納屋の事をたずねてみたら、「お前もおねだりされたか」と笑った。
先々代のころから、家の者が森に入ると納屋が現れる事があったと言う。
「社でも建ててほしいんだろう」
また祖父が笑った。
狐に化かされたのは初めてだ・・・。