友人の話。
子供会のキャンプで、食事当番になった時のこと。
カレーを作るために野菜を煮込んでいると、知り合いの奥さんから言われた。
「ここの森には芋泥棒が出るから、鍋には注意しててね。」
友人が「何ですかそれ?」と聞き返すと、知り合いの奥さんは困ったような顔になり、「とにかく鍋の側から離れなければいいから」、と繰り返し言われたという。
あまり真剣に受け止めなかった友人は、キャンプファイヤーの薪組立に興味を引かれ、灰汁取りが終わると少し火の側を離れてしまった。
鍋の前に戻ってき、そろそろルーを入れようかと蓋を取る。
中を覗き込んで違和感を覚えた。
しばし経ってやっと気が付く。
芋や玉葱など野菜の類いが、根こそぎ失くなっていた。
皆に怒られながら、『芋泥棒』という名の意味や、知り合いの説明に困った顔の意味がやっと理解できたそうだ。
物足りないカレーを食べながら、どこかひどく悔しかったという。
九州は鹿児島での話です。