小学校低学年の頃、夏休みに田舎の祖父母の家に泊まりに行った。
そこは古い家でポットン便所だった。
うんこが下の肥だめに落ちるとハネが返ってくる。
いわゆる「おつり」だ。
子供のうんこ程度ではそれほど大きく跳ねるわけではなく、たいていは飛沫がお尻に少しかかるくらいだったが、子供心にそれが珍しかった私は、毎日、いわゆるおつりがくるのを観察していた。
ある日、今までになく大きな「ボッチャーーン」という音がして盛大なおつりがお尻にかかった。
どう考えてもそれほど大きなうんこはしなかったはずなのだが、まるで子供が落ちたような大きな音だった。
私はしばらく呆然と肥だめの中を覗き込んでいた。
そこにはうんこまみれの子供の姿があった・・・。
しばらくして、ハッとわれに返った私はその子供が自分であることに気がついた。
うんこまみれの私自身を、上から私が覗き込んでいた。
人生で最初の幽体離脱だった。
スウッと、気が遠のいていった。
次に気がついたとき、私はお花畑のような場所にいた。
周りには誰も見えないが、たくさんの人が私を遠巻きにしているような気配がしていた。
少し先に見知った顔が浮かんだ。
先年他界した伯父だった。
生前、伯父にはかわいがられたので、私はうれしくなって近寄ろうとした。
しかし、伯父は手を振り「来るな」というようなしぐさをした。
私は伯父が好きだったので悲しくなり、さらに近づこうとした。
すると伯父は急に恐ろしい顔になり、大きな声で「来るな」と叫んだ。
私はどうしていいかわからず立ちすくんだ。
次の瞬間、伯父はさらに大きな声で叫んだ。
伯父:「近寄んな!臭っせーーんだよ!!」
私は死にたくなった。
気がつくと私は、風呂場に裸で横たわり、祖父にお湯をかけられていた。
傍らで祖母が心配そうな顔をして覗き込んでいた。
人生で最初の臨死体験だった。