幼い頃、市立病院に一ヶ月入院することになった。
一部屋に5人程度収容できる小児病棟の一番端の部屋に入れられた。
隣の部屋とは大きなガラスで仕切られており、それによってずっと何部屋も先まで見通すことができた。
その様子は電車の連結部を通して先の車両が見えるようだった・・・。
俺は隣のベッドの患者であるヨシカちゃんと親しくなった。
この子は不思議な子で、昼過ぎ頃になると「あの子見て。多分今日でお別れだよ。」と言う。
トイレを除けば一日中自分達の病室にいるので、別の病室の子と交流を持ったり、情報が聞こえてくることはないのに、不思議とその予感は的中した。
ベッドにはプラスチックの札がつけられていて、色で容態が区別されていた。
白は退院が近く入浴なども許される。
そこから徐々に暗い色になっていき、赤は入院直後の安静が必要な子となっていた。
俺はずっと赤。
ヨシカちゃんは白で、俺よりも食事内容など、全てが健康に近いことを示していた。
そんなヨシカちゃんが寂しそうに「私たち多分今日でお別れだよ。」と言い出した。
俺はヨシカちゃんが今日で退院するのかなと思ってた。
その日の午後、何の前触れもなくヨシカちゃんは意識不明になり、カーテンが引かれ、医師や看護婦が大挙して押し寄せてきた。
緊迫した雰囲気の後、彼女は病室から居なくなった。
後になって知ったのだが、市立病院からすぐ近くの場所には大学病院があり、手に負えないほど重度の患者がそこへ搬送されていたらしい。
大学病院へ搬送された後、多くの子供は天に召されていた事もわかった。
ヨシカちゃんは何度も予言を的中させていた。
彼女は何を見ていたんだろう?