時空のおっさんらしき人に会ってきた。
ついさっき。
仕事中、ふと顔を上げると誰もいなかった。
店内放送は無いし、お客様も従業員もいない。
棚の商品はそのままだが、そこに書いてある文字が読めない。
文字化けしてるような感じだが、俺の知ってるどの言語の文字でもなかった。
何だか目眩のする感覚を覚えながら、ふらつく足取りで店内を歩いていく。
床、陳列棚、商品、表示物・・・そこかしこに違和感を感じるが、狂気に侵されるような恐怖を感じて注視することはできなかった。
50mほど歩いただろうか?
担当フロアの端、メイン通路まで来たところで、不意に声がかかった。
「おい、何してんだ!」
40代くらい、作業服の男性が、唐突に通路の真ん中に居た。
視界の中に突然現れたのだ。
俺:「何って言われても・・・こっちが聞きたいよ。何なんだこれは?」
反射的に言い返した俺に、男性は舌打ちで返すと携帯電話らしきものを取り出した。
それをよく見ようとしたら、急に目眩が酷くなり、その場に膝をついた。
暗くなる視界の中で床の紋様が目に焼きつく。
「まさかな・・・帰れるといいな」
おっさんの言葉がかろうじて聞こえた。
次の瞬間、俺は元に戻っていた。
おっさんに会ったその場所で立っていた。
店内の喧騒が戻っている。
まるで夢だったようだ。