友人から聞いた話です。
中学生の頃、学校の帰り道にある神社の夏祭りに友達と二人でいくことにしたそうです。
彼女の地元は小さな港町で、高台にあるその神社も古くからあって、お世辞にもきれいとは言えない本当に小さな神社です。
お祭りも屋台が十ほどの小規模なものですが、それでも幼い彼女には年に一度の楽しみなお祭りだったのです。
夕方、やや暗くなりかけた道をいつものように友達と仲良くおしゃべりをしながら、通学路を歩いていると、遠くからお祭りの屋台の何とも言えない懐かしいような、こころが弾むような、良い匂いが漂ってきます。
お祭りの賑わいがだんだん近づいてくると、彼女の友達は気が急くのか、神社へと続く長い階段をはしゃいだようにセーラー服のスカートを翻しながら上っていきます。
おそらく、「早く行こう」などと言いながら。
少し遅れて、彼女も友達に追いつこうと足を速めたそのとき、友達が鳥居の前でぴたりと立ち止まってしまいました。
遠くで、陽気な笛の音が聞こえます。
不審に思った彼女もその場で立ち止まり、「どうしたの?」とたずねました。
その友達は「鳥居をくぐることができない」と言います。
振り返った友達の表情は逆光で影になり、よくわかりません。
夕日に染まる階段に長い影が切りとられたように浮かびあがっています。
彼女は恐るおそる何故かと問いました。
すると、こう言ったそうです。
「手とか足とかしかない子供が生まれてきちゃうから」
私の友人は今でもトラウマだそうです。
この話を大人になってから聞き、なにそれ怖いと言ったら「あんただよ!」とつっこまれました。
私にはそんなことを言った記憶が一切なく、逆に私がほんのりと怖い。