田舎で同級生から聞いた話。
彼の家は牛飼いで、今でもたくさんの牛を飼っています。
夜は牛を牛小屋に入れるのですが、翌日になると怪我をしている牛が時々いたそうです。
引っかいたような傷があったり、噛まれたような不思議な傷だったりと、獣に襲われたような感じだったそうです。
小屋を点検しても狐なんかの穴はなく、小屋自体も新しく建てたものだったので壊れているところはありませんでした。
牛小屋と彼の家は離れているので、夜通し見張ることはできません。
ある日、彼は不寝番に立つことにして牛小屋に泊り込みました。
敷物や毛布を持ち込み、小屋の隅っこで寝転んだそうです。
あたりは真っ暗になり、いい加減に眠くなった彼は、電気を消し寝ることにしたそうです。
疲れていたのか、直ぐに眠ってしまったそうです。
どれくらい経ったか、なんだか小屋の中が騒がしいのに眼が覚めました。
牛が騒いでいるようです。
「なんだ?もしかして・・・犯人か?」と思った彼は、懐中電灯と木刀を持ち騒ぎの方へ行ってみると、一頭の牛が尻を振るように暴れています。
ちらっと見えた限りではサルのように見えたそうです。
「コラッ、なにしよるんじゃ!」と怒鳴り、懐中電灯を向けると、そのサルのような生き物は彼のほうを向きました。
なんとも形容しがたい生き物だったそうです。
大きさは大人のサルくらい、毛は黒くヌメっとしたような感じで、長い爪と歯が見えたそうです。
思わずウゲっと思い、たじろいだ彼に、「ケーっ」と言った感じの鳴き声のような悲鳴のような声で鳴くと、牛から離れて壁へ取り付き、屋根にある通気孔から外に出て行ったそうです。
気持ち悪いのと驚いたので唖然としていたそうですが、またアレが来ると思うと気味が悪く、小屋の電気を全部つけて朝を待ったそうです。
日が昇り彼の両親や従業員が来ると、昨晩の一部始終を話しました。
すると従業員の一人に似たような話を知っている人がいました。
その生き物の名前はわからないそうですが、灯りが発達してなかった昔は時々牛を襲っていたそうです。
子牛などは食い殺されることもあったとのことでした。
どこから来るのか、何が苦手なのか等もよく解らなかったそうなので、とりあえず小屋を改装して鍵を付けたりしたそうです。
「とにかくよ、気持ち悪かったわ。入って来ねえように鍵付けたし、通気もファン付けて入れねえようにしたけど・・・なんかなあ」
彼はそう言って締めくくりました。