「戸○団地」
あの一帯は土地自体がアカンのかもな。
実は25年ぐらい前、その団地のすぐ近くに住んでたんだ。
2階建てのアパートで、俺の部屋は2階の端。
仕事で帰りが遅くなるので出勤時は電気を消し、いつも薄いカーテンを閉めて家を出ていた。
で、帰宅が深夜になったある晩のこと。
アパートのそばまで来てふと自分の部屋を見上げると、ぼんやり灯りがついている。
就寝時につけておく一番弱い「小」の灯りだろうな。
あれ、消し忘れたか?
そう思った瞬間、カーテンに人影が映ったので俺は凍りついた。
影(たぶん男)は両腕で頭をかきむしったり、上体を大きく振ったりしながら室内を動きまわっている様子。
空き巣だ!
盗むモノがなくてイラついているんだ!
俺は慌てて階段を駆け上がった。
ところが、部屋はシーンとして、ドアの鍵は閉まったまま。
恐る恐る鍵を開けると室内は真っ暗で、誰もおらず、荒らされた形跡はまったくない。
その時は引っ越して間もなかったし、他の部屋と見間違えたんだろうと思ったが、同じことが2度3度と続き、さすがの俺もこれは変だぞ?と思うようになった。
考え過ぎかもしれないが、影の動きは激痛にもがき苦しんでいるようにも見える。
いっそカーテンを開けて家を出ようかと考えたこともあるが、影の正体をもろに見てしまうのが怖くて、それはどうしても出来なかった。
幽霊や金縛りなどはなかったが、それ以降は思いがけない病気になって入院・手術を余儀なくされたり、彼女にフラれたり、仕事も下り坂になったりと、ツイてないことだらけ・・・。
日常的に些細な不気味(1日で食パンにカビが生えるとか、カミソリやハサミなどの刃物類がやたら消えるとか)も頻発したので、とうとう俺は嫌気がさし、2年足らずでその部屋を引き払った。
それ以来、あの付近には一度も足を踏み入れていない。