「なんか、怖い話の実体験ない?」って家族に聞いてみたんだけど、そしたら俺の話題が出てきてびっくり。
意外にも、俺、幼稚園入る頃にお祓いしてもらったことがあるらしい。
俺はまったく覚えてない。
親父おふくろが言うには、もしかしたら俺含め家族みんなが祟り殺されてたところだったかもだって、笑いながら言ってたけど・・・ホントかよ。
んで、そのお祓いの話はこんなだった。
まず、親父と俺はドライブ行ったんだ。
田舎だから山、山、山の峠道を車でなんだけどね。
その頃は秋で紅葉が見事で、車から降りてしばらく森林浴しようかとテキトーなところに車止めて散歩したって。
俺はドライブ好きだったから、かなり興奮してウロチョロしまくってたらしい。
物拾っては投げ、走り騒ぎおおはしゃぎ。
山ん中だからヤッホーとか叫んだりテンションあがりまくり。
んで、暗くなる前に帰るかって時に俺ダンコ拒否。
もっと遊ぶってワガママ発揮する俺に困った親父は、また明日連れてってあげるからって約束して、ようやく家に連れ帰ったんだって。
家に帰ってから、俺は本当に次の日同じ場所に連れていってもらうためか、ポケットから何か物を出してこう言ったと。
「これ借りてきたから、あしたもういちどいかないと、コレ返せないからね!」
借りてきたってなんだよ、ってその物をみたら、鉄屑(てつくず)みたいな、錆びたボロボロのなにか。
子供服のポケットに入る位のゴミ。
何でも拾う癖のある俺だったから、いつものようにおふくろはそんなもの捨てなさいって俺からそれを取り上げて庭にポイ。
もちろん俺大泣き。
当然次の日ドライブにはいかなかったって・・・約束なんて俺を連れ帰る口実だったから。
だいたいここまで書くともうオチわかってると思うけど、この事が原因で祟りが始まったと。
ドライブの日から翌々日の夕飯どき、泡ふいて奇怪な行動を取る俺をみて親父が異変を察知。
首ブンブン振るわ一点見つめて笑うわ同じ方向に向かって走り壁に激突、鼻血出してもまた同じ方に走ろうとするわ・・・子供の癇癪(かんしゃく)じゃ済まない挙動だったらしい。
またその翌日から、田舎特有のご近所ネットワーク発動。
昼間から向かいのおじいさんはキツネだ、となりのおばあさんは山神だと熱く議論するほどだったそうな。
そんな議論なんてどーでもいいから早く俺を治してしまいたいおふくろは、檀家してるとこの坊さんに電話した。
じーさんばーさんの議論をどうにかしたいのも含めて、俺の異変が祟り絡みなのかをダメ元で見てもらうために。
坊さん、電話に出たとたん物凄い剣幕で「なにやったんかー!!」と激怒され、おふくろは「もしもし」しか言わなかったのにいきなり怒鳴られわけわからんかったと。
「◯◯の家ですけど・・・」言うやいなや「今から行く!子供外に行かんよう柱に縛っとけ!!」と電話切られておふくろポカーン状態。
なるほど確かに暴れる俺はどこかに行こうとしてるみたいだということで、坊さんくるまで親父ががっちりホールド。
そしたら親父まで気分悪くなってきた。
寒くなってきた、まだ秋なのにガチガチ震えた、身体重くなった、目が回ってきた、とか。
「精神的なものかもしれないが、あの時はホントに気分が悪くて、お前離して楽になりたかった。でも離さなかった」と。
そうこうしてたら玄関から坊さんの声が聞こえてきた、「塩くれ!わしにかけれ!はやく!」って。
家に入るのに塩かけるのか?普通逆じゃね?
ようやく俺の様子見た坊さんは、気分悪くて死にそうな親父からドライブの話を聞いた後、しばらく家の中うろうろして「剣無いか?剣なかったか!?」って。
鉄屑が剣だったんだろうな。
多分。
おふくろは「そんなものない」って告げると、いよいよ坊さん青くなって「やばい、(あんたらの)一家やばいぞ!どうしよう!」と。
おふくろ散々脅されたらしい。
んでお祓いの儀式。
俺は縛られ親父は寝込み、その傍でお経読む坊さん。
キツネだ山神だいってたおじいさんおばあさんも一緒に。
もう雰囲気が恐ろしかったらしい。
まさかわが家でこんな事になるなんてって。
結局、お祓いは成功っぽかった。
親父はすぐに良くなったが、俺は数日かけて祓ったんだって。
お寺に通い詰め。
事が済むまで、ドライブの日から実に3週間!
なんか、俺が山で「借りて」きたものを返さなくて、それが原因で「貸主」が俺を祟って、家まで取り返しにきたのを坊さんが無理矢理追い払ったっていってたそうだ。
貸主が何かはわからないし、ポイ捨てしてしまった鉄屑?かりてきた剣?は見つからなかった。
っていうか探さなかったって。
また祟られると恐いからと。
もしかしたら20年近く経った今でも庭にあるかも。