小さな頃、お祖父ちゃんにぼっとん便所のお化けの話を聞いたことがある。
月夜の晩に酔って帰ってきたら、もよおしたので離れのぼっとん便所で用を足していた。
田舎では汲み取り用に昭和中頃まで母屋と便所が離れているところも珍しくはなかった。
すると、下からニュと手が伸びてきて、お爺ちゃんの金玉を鷲掴みにした。
とんでもない痛みに便所から飛び出して、祖父ちゃんは地べたを転げまわる。
それ以来、祖父ちゃんはどんなに酔っていても下を確認してから、ぼっとん便所を使うようになったとのこと。
それをお祖父ちゃんの一周忌に祖母に話すと、ニカリと笑ってこういうのだ。
村々に出向いては宿に泊まって商売する売女が昔はどこにでもいた。祖父さんも客の一人だった。女がくると昼からソワソワして金がなくなるからすぐに分かったという。
ある日、頭にきたので爺が便所に入ったところを汲み取り式のわきの穴から覗くと情けないフグリが見えた。
そこを竹竿で一突きしてやったというオチだ。
股を押さえて転げまわっているさま見て、溜飲が少し下がった想いだったという。
それでも女遊びは収まることなく、ちょくちょくは遊びに行っていたらしいが・・・。
お祖父ちゃんのこと嫌いだったか?と訊くと、嫌いだったねぇ・・・と笑いながらお祖母ちゃんは言った。
そんな話。