もう十五年くらい前の話。
保険の外交員をやっていて、色んな家に飛び込み営業してた。
埼玉と茨城と栃木の県境あたり、今だと古河市かな?
車で回ってて渡良瀬川の土手沿いにパラパラ民家があった。
そこシラミつぶしにやろうかと思ってね。
で、適当に目についた家に行ってみた。
古くて小さな平屋の昔よくあったタイプの貸家だった。
呼び鈴がないからドア叩いたら返事があって中に入ったら玄関先に婆さんがいた。
その婆さんが腰くらいまである白髪になんか、生気の無い顔色してて結構異様な雰囲気かもしてた。
そんで目を引いたのが、爪・・・。
すげー長いの。
長いなんてもんじゃなくてインドのギネス乗ってる人みたいなに長いの。
んで真っ赤なの、そういえばギネス載ってる人も爪赤くしてたね、保護のためらしいけど。
なんか怖かった。
家の中は昼間なのに暗いしさ。
そんで玄関の奥に台所があって、そこにも家族っぽい女の人がいたんだけど、その人がなんかすごい音立てて包丁で切ってるの。
ダンッダンッ!て。
婆さんに家に上がるように言われたけど、怖くなってそそくさと逃げるように帰ったわ。
そんでしばらくその地区には近寄らなかったんだけど、暫くしてから別件で近くに行かなくちゃ行けなくなって、気になってその家探してみたんだけど、もう見つけられなかった。
いつも営業マンをそうやって追い返している家なのかな。