14歳の夏。
ボクは近所の広場で友人とキャッチボールをしていた。
広場の端では、自治会で集まった数人のおじさんやおばさんが草刈りをしていた。
青々とボクの背丈ほどにも成長した雑草が、おじさんの草刈り機の刃によってなぎ倒されていく。
その倒れた雑草を鎌でかき集め、小山のように積み上げていくおばさん。
“ギュンッ!”
聞き慣れない音だったが、さして気にはならなかった。
“ひゅぅぅぅ!”、“ヴァヴァヴァヴァ――ッ”
友人の構えるミットにまさに投げ込もうとした瞬間だった。
ボクはその異様な音に反応して音源の方向を見遣った。
5mばかり離れた場所で、両腕を8時20分の角度に開いて棒立ちしたおばさん。
頭の上から、なんだか赤いレースでも被ったかのように見えた。
歯車の歯が欠けたカラクリ人形のように両腕はガタガタと震え、まるで錘を付けられた脚を無理やり動かそうとでもするかのように、おばさんは一歩二歩と歩いた。
近くにいたおじさんが奇声を発しながら飛びついた。
すぐさま別のひとりがはじかれたように飛びかかり、二人がかりでおばさんを引き倒す。
大の男ふたりに乗りかかられてもなお、おばさんの身体はがたがたと揺れていた。
親父が駆け寄ってきてボクを抱き寄せ、視界を隠した。
「見るな」
親父の声は震えていたように思う。
ボクは言われるままに目を閉じた。
でも、少しの慰みにもならなかった。
ボクは見たんだ。
おばさんの頭が本来あるべき場所になかったこと。
はっきりと聞こえたんだ。
血液の噴出とともに漏れ聞こえてくる、くぐもったスクリュー音のような音。
ちなみに、最初に聞こえてきた“ギュンッ!”という音は草刈り機の刃が石を噛んだ音。
刃は草刈り機本体から弾き出ておばさんの首をとばした。
後の捜索で、刃はおよそ20mほど離れた郵便局の駐輪場の屋根に突き刺さっているのが発見された。