仕事仲間の話。
山奥の倉庫で雪掻きをしていた時のこと。
入口をかたして車が出入り出来るようにしたところで、雪だるまに気が付いた。
倉庫の壁と山肌の間に、結構大きな雪だるまが鎮座している。
「自分以外まずここには来ないだろうに、一体誰が作った物やら」
不思議に思い、近よって手を触れてみた。
熱っ!
掌が火傷したかのように痛んだ。
慌てて手を引いたが、触れた箇所が少し赤くなっていて、冷気が凍みる。
「劇薬でも混じっているのか?うちじゃ扱ってない筈だが・・・」
腹が立ったのと気持ちが悪いのとで、無視することにした。
翌日は好天になり、周囲の雪はかなり溶けていた。
しかし、例の雪だるまは昨日見たままの大きさだった。
溶けている様子がまったく伺えない。
その次の朝も、雪だるまはまったく溶けていなかった。
放っておくのも不気味になってしまい、崩して壊すことにした。
バールを持ち出すと、えいやっと表面に突き入れる。
その次の瞬間、内から弾けるようにだるまはバラけた。
黒土の上に散った雪塊はすぐに溶け始め、あっという間に消えてしまったという。
彼はそれ以来、雪が降ると、倉庫の周りをしっかりとチェックするようになった。
怪しい雪だるまがひっそりと身を隠していないかと。