同じマンションのA奥が妬ましくて仕方なかった。
凄い美人で色っぽいし頭の回転が早くて会話も面白いし英語堪能。
でも押しが強いではなくどちらかと言うと控え目で、誰かを立てる事がとても上手だった。
他の奥にも可愛がられてて大人気でアイドルみたいだった。
持ち寄りでホームパーティした時の料理もお洒落で美味しくて、私の旦那も他の家の旦那もメロメロだった。
A奥の旦那は旧帝卒の医者で年齢の割に出世してるそうだ。
私の旦那も世間的には低スペックじゃないけど、当時の私は愚かだったからA奥が羨ましくてたまらなかった。
A旦那は背が高くて美形で格好良くて、近所の子供とも遊んでくれる気さくな人。
女なんていくらでもつまみ食いできそうなスペック。
マンションの奥たちも(冗談だろうけど)A旦那さんになら誘われたら断れないよねーなんて言ってた。
A旦那がA奥にべた惚れだったから言えた冗談だったけどね。
でも当時の私は自分に自信があって、確かにA奥は美人だけど元モデル(売れなかったけど)の私だって負けてないと思い込み、A旦那に色仕掛けwを試みた。
最初はA旦那は色仕掛けと気付かないで適当にかわされていたが、その内挨拶をしても無表情に生返事しか返って来なくなり、一度はっきり「迷惑だ」と言われた。
それでも私はやめなかった。
旦那に言うなら言えばいいと思っていた。
むしろそれ位のきっかけがないともう引っ込みがつかなかった。
最終的には完全に無視されるようになった。
A奥は気付いていなかったのか、私と擦れ違うと笑顔で挨拶してくれていた。
私はそれもムカついてA奥に厭味を言ったりするようになっていた。
やんわり止める周囲は気付いていたと思う。
A奥が私を避けるようになってやっとまずいと思い嫌がらせは止めた。
でもA奥は(元々繊細っぽかったけど)軽く心を病んで鬱っぽくなって、心療内科に通い始めたと他の奥に聞いた。
ある日エレベーターが混んでいたので非常階段を使って見る事にした。
誰も使わない階段なので旦那には使わないように言われていたけど、子供のお迎えに遅れそうだったのでその日初めて使った。
偶然だけど先をA旦那が降りていた。
どうせ無視されるのは分かってたけど、ちょっと追い掛けて声をかけてみた。
すると、いきなり襟首を掴まれて階段を突き落とされた。
全身を打って物凄く痛くて動けなかった。
A旦那が凄くゆっくり階段を下りて来て私を見下ろしていた。
凄く冷たい目だった。
しばらく私を見ていたけど舌打ちされた。
多分生きていたからだと思う。
A旦那は私のお腹を歩きながら踏みつけて無言で階段を降りて行った。
私はしばらく動けなかったが何とか階段を上がり、エレベーターホールへ戻った。
エレベーター待ちをしていた近所奥が私の様子を見て大騒ぎになった。
この時は自覚してなかったけど、右腕が折れていて頭から血が出ていたらしい。
騒ぎを聞いたのか色んな人が集まって来た。
その中にA奥もいた。
天罰だと思った。
その後近所の奥に病院へ連れて行ってもらえた。
嘘のような話だがA旦那が担当だった。
A旦那は私に優しかった。
看護婦さん達の人望も厚そうで、私を階段から突き落とした人と同一人物には思えなかった。
検査してもらって二日間入院になった。
旦那と子供が駆け付けて説明を聞いて、命に別条はなくて旦那は泣いて喜んでいた。
家族は泊まれない完全看護なので私は一人だったが、夜の回診でA旦那が来た。(看護婦さんと一緒)
A旦那は普通に「お医者さん」で優しかったが「もう変な真似はしないでおきましょうね」と言われた時、目が笑わない笑顔でゾっとしたし心から後悔した。
今は私もおとなしく良妻賢母を演じているが、フロアでA夫婦のどちらかに会うと怖くて仕方ない。
A旦那は私の旦那に「夫婦仲はどうか」と遠回しに言い、子供ができてから冷め気味だった関係を改善指導したらしい。
旦那は私に色々優しくしてくれるようになって、私もなぜこの人をないがしろにするような真似をしたのか反省した。
この事で旦那はすっかりA旦那の信者になった。
A奥はマンションで相変わらず人気者で悪口を言う人はだれもいない。
A旦那は近所の奥が子供の病気で相談しても嫌な顔をしないで聞いてあげている。
でもあの目を知っている私は二度と近寄れない。
私に落ち度が100%以上あった事は分かっているし、もしこれがバレて離婚されたり賠償を求められても仕方ないけど、それよりもA旦那の様な異常者が医者である事が凄く怖いと思っている。
旦那の転勤が決まったので記念カキコでした。
やっとA夫婦から逃げられる。