一歩間違えると誘拐犯

カテゴリー「日常に潜む恐怖」

車で九州から東京に向かう途中。
日が暮れて寒くなったので、上着を着ようと、SAで車を停めた。
後部座席においたつもりだったが、トランクの荷物の方に入れていたので、トランクを開けて上着を探した。
どのバッグに入れたか分からなかったので、5分ほどゴソゴソしていたと思う。

無事上着を着込み、再び走り出した。
しばらく走っていると、泣き声が聞こえる気がした。

ラジオの音かと思い、ボリュームを下げてみると、後ろからすすり泣きが聞こえてくる。

ギョッとしてミラーを見るが、車内はほとんど映らないし、高速なので振り向くのも危険。

とりあえずSAに入り、恐る恐る後部座席を見ると、全く知らない女の子が乗っていた。

驚きすぎて声が出なかった。
とにかく子供を下ろして、警察に電話した。

前のSAに止めたとき、俺がトランクをゴソゴソしている間に乗り込んだらしい。

「自分の車だと思った、違うのに気がついたけど知らない男の人が乗ってきたので
勝手に乗ったのを怒られると思って、しゃがんで隠れてたら車が走り出した。どうしていいか分からなくて泣いてた」

女の子(7)は家族と一緒にお出掛けの帰りで、トイレのあと先に一人で車に戻ったのだそうだ。
その時、同じ車種で同じ色の俺の車に間違えて乗ってしまったらしい。

ちなみに、女の子が乗ったのは山口県のSA、俺が気がついたのは岡山県のSAだった。

カメラの映像で、女の子が自分で乗り込んだことは立証出来たが、誘拐犯の冤罪を着せられるんじゃないか、ロリコンの容疑をかけられるんじゃないかと生きた心地がしなかった。

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