住む地域は慎重に選んだ方がいい話

カテゴリー「日常に潜む恐怖」

以前、けっこう治安の良くない街の安物件に住んでた。

駅から歩くと結構距離あるんだけど、何度もチャリをパクられ結局もう徒歩移動しかなかった。

その日は小雨で、帰宅途中雨があがり傘を閉じて気づいた。
自分の影より長い影が背後から伸びてる。

足音はあまり聞こえないけど気配は感じた。
でも振り返ることはどうしてもできなかった。

変質者だったら家を知られちゃマズいと思い怖いのを我慢して少し離れたコンビニまで急いだ。

時間を潰し、頃合いをみてダッシュで家に向かうと、途中の通りの角から長い影が見えた。

コンビニ以外店は閉まってる時間なので飛び込む場所もなく、迷路のようにぐねぐねと道を駆け巡り、左右確認。
人影はなかったので一気に家に駆け込んだ。

鍵をかけ、電気もテレビもつけずに毛布を被って震えた。
灯りを漏らすと所在がバレるような気がしたから。

帰宅から一時間くらいたったあたりで、物音で目が覚めた。
あのまま寝てしまっていたようだった。

玄関ドアを叩く音が何度もしている。
音はどんどん強くなり、蹴るような音、チャイム音が酷くなっていく。
しばらくすると音がやみシーンと静まった。

終わった、と思った瞬間、ドアノブがガチャガチャ!と激しく鳴った。
ガチャガチャガチャガチャ!もう壊れるんじゃないかと思ったら恐怖より怒りが湧いてきた。

熱があるのに休めず終電ギリギリまでサビ残させられ、疲労困憊で帰ってきたっつーのに、こんな街じゅう走らされて寝こみを叩き起こされ、そして今玄関ドアノブを壊されようとしている。

そう思ったらもう凄まじく腹が立って、狂気と殺気の雄叫びをあげながら玄関ドアを連続蹴りしまくった。

ふとパトカーのサイレンが聞こえる。
周りの住人が110番したんだと思う。

そこからはか弱い被害者モードになり、怖かったですぅとメソメソ。
周辺パトロールを強化してくれることになって、それ以来怖いことは起きなかった。

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