地方に言い伝えられるコロビ

カテゴリー「不思議体験」

その昔、地元で大きな山火事があったのだそうだ。

彼も鎮火に借り出されていたが、火の勢いを止めることはできなかった。

その斜面から撤退して、態勢を立て直そうと決めた時。
真っ赤に染まった林の奥から、悲鳴を上げて近づいてくるものがいる。

逃げ遅れた動物がまだいたのか。

あわてて背後の林を振り返る彼の前に、奇妙な動物が飛び出してきた。

彼の膝ほどの体高で、全身が真っ黒い毛皮に覆われていた。

その身体は丸い大きな球状をしており、顔や手足は見当たらなかったという。

それはピューイピューイと甲高い鳴き声を上げながら、彼の横を勢いよく転がり落ち
麓の方へ消え去った。

後にも先にも、あんな奇妙な姿の動物など見たことがないという。

実家の祖母に話すと「コロビがまだいたんだねえ」と言われたそうだ。

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